
金融業界のイメージは、高収入なエリートビジネスマンが多く、格好いいという想像をされる方も多いかと思います。ドラマや映画でも金融業界を描いた物語も多く、憧れを抱く方もいるでしょう。
これまで他の業界で働いてきた人の中にも、「金融業界に転職したい」という気持ちが強く、転職活動を進めようとしている方もいるはずです。
そこで、本記事では金融業界への転職を目指す方のために、業種・職種のほか、年収や仕事の魅力、転職のアピールの強みとなるスキルを詳しく解説していきます。
金融業界への転職は難しい?
金融業界への転職には、「難しそう」というイメージを持たれる方も多いと思います。結論から言うと金融業界への転職であっても、一般的な企業への転職と大きな違いはないため、特別に転職が難しいということはありません。
ただし、一般企業に比べて必要となるスキル、人材の傾向が若干異なることから、その点には注意する必要があります。また、金融業界はお客様からお金を預かり、そのお金で資産運用や投資、保険業などを運営しているため、お金の扱いにはひと際厳しい業界です。
お金の厳格な管理を行っているために、細かな数字にも注意できる人に向いた仕事と言えます。
金融業界の業種・職種
金融業界には、9つの業種とそこで働くビジネスマンの職種があります。どのような業種・職種があるのか、代表的なものをご紹介します。
金融業界の業種とビジネスモデル
金融業界には大きく分けて、9つの業種があります。
- 銀行
- 証券会社
- 保険会社
- クレジットカード会社
- 信販会社
- 政府系金融機関
- 不動産金融
- リース会社
- アセットマネジメント
中でも代表的な存在が「銀行」「証券会社」「保険会社」の3業種です。
銀行には、巨大な資産を保有するメガバンクや地方に本店を置く地方銀行、地域の資金を地域に還元する信用金庫などがあります。
証券会社は全国に店舗を置いたり、オンライン上で取引を行ったりして、投資や資産運用などを行っています。
保険会社には色々なタイプがあり、生命保険会社や損害保険会社、カード会社なども保険会社の一種です。
金融業界の職種
次に金融業界で働く人の職種についてもご紹介します。
- 金融事務
- ホールセール
- リテール
- 保険外交員
- プライベートバンカー
- ディーラー
- トレーダー
- ファンドマネージャー
- ファイナンシャルプランナー
- 証券アナリスト
- エコノミスト
- アクチュアリー
代表的な職種だけでもこれだけあり、裏方の仕事から営業、対外的な交渉役、資産運用の専門家など様々です。
ドラマや映画で主役になる銀行マンの場合、ホールセールやリテールと呼ばれる営業職で、大企業から個人のお客様まで様々な方を相手に相談を受けます。
いずれの職種も金融に関する深い造詣が必要で、お客様の金銭的な利益を第一に考えて働くことが大切な仕事ばかりです。
金融業界の年収と魅力
次に、金融業界の年収の相場や魅力についてもご紹介します。
金融業界の年収は平均より高め
金融業界の年収は、所属する企業によって前後するものの、日本人の平均給与総額よりも高いとされています。国税庁の発表する1年を通じた平均給与所得は、443万円となっており、男性は545万円、女性は302万円です。
一方、金融業界の年収の相場は、平均年収が454万円、男性は551万円、女性は443万円となっています。ただし、保険業や証券業を中心とする企業の場合、平均年収も高くなるため、あくまで参考程度の数値です。
また、調査元によっては金融業界の平均年収が600万円以上になることもあるため、金融業界は全体的に日本の平均年収より給与が高いと考えてよいでしょう。
財務・経理の知識があり、高年収の仕事に転職するなら、金融業界をおすすめします。
参考:国税庁『令和3年分 民間給与実態統計調査-調査結果報告- P13』
参考:doda 『年収の高い業種は?平均年収ランキング(業種別の平均年収/生涯賃金)』
金融業界の魅力は安定性とやりがい
金融業界の魅力は、平均年収の高さだけでなく、安定性とやりがいの大きさにもあります。一般企業の場合、経営状況は社会情勢や運営方法に左右され、間違った経営をすれば破綻することもあります。
しかし、金融業界では銀行のビジネス縮小はあっても、預金保険法のおかげで破綻する心配はほとんどありません。そのため、長期的に安定した働きがしやすく、公務員と近い条件で働ける点が魅力の一つです。
また、金融業界は仕事のやりがいの1つです。金融業界はお金と密接に結びついた仕事であると同時に、お客様の人生に大きく関わる仕事でもあります。
自分の関わったお客様が大きく成功し、感謝の言葉をもらえた時は、非常にやりがいを感じるでしょう。
金融業界への転職でアピールしやすい7つのスキル
金融業界への転職でアピールする際、アピールに材料となりやすいスキルを7つご紹介します。
コミュニケーション能力
コミュニケーション能力はどのような仕事でも必要ですが、金融業界でもコミュニケーション能力が必要な点は例外ではありません。バックオフィスのような事務メインであっても、お客様への対応をする機会は多くあります。
お客様対応では、お客様に不快感を与えないように丁寧な言葉遣いで接し、ご要望に応じて柔軟な対応をしなければなりません。お客様の希望をくみ取るという意味でも、コミュニケーション能力の高さをアピールすることは重要です。
ストレス耐性
金融業界は非常に多忙であると同時に、お客様対応で多くのストレスを感じやすい仕事です。金融業界はその大変さから、人の入れ替わりが激しく、高いストレス耐性がないと続けることは難しいです。
また、仕事においてはノルマを課されることも多いため、毎月のノルマが精神的に強いストレスになる方もいるでしょう。金融業界で働きたいなら、ある程度ストレスに耐えられる方や、ストレスコーピングができる人が向いています。
財務・経理スキル
金融業界はお金を扱う仕事ですから、財務・経理に関連するスキルを鍛えておくと、転職活動でアピールする材料になります。例えば、次の資格を取得していると、有利になるでしょう。
- 電子会計実務検定
- 日商簿記検定2級以上
- 証券外務員
上記のスキルを持っていれば、転職活動では他の候補者に対して一歩リードできます。
実力の裏付けにもなるスキルですから、積極的に取得を目指してください。
仕事に対する真摯な姿勢
お金を扱う仕事をするなら、1円の間違いも許されません。金融業界で取り扱うお金は、すべてお客様からの信頼を受けた大切な預貯金や、投資のお金だからです。
1円でも金額にズレがあるなら、何回も同じ項目を確認し、計算し直さなければなりません。
金融業界の仕事は細かな作業でも、真面目に取り組む人が評価されます。自分が仕事に対してどう向き合ってきたか、これまでの経験をエピソードとして交えながら、真摯な姿勢をアピールしてください。
情報収集能力
金融業界で働くには、現在の日本の政策や金融情勢、世界経済など幅広い情報を知っていることが非常に重要です。加えて、金融業界では業務効率化のためにAIを導入する企業も増えており、最新テクノロジーについてもある程度の知識が求められます。
日々を漫然と過ごすのではなく、様々な情報にアンテナを張り、新しい知識を身に付けようとする人材は採用担当者にも好印象です。
細部まで配慮できる気遣い
銀行や保険業、証券会社では、お客様対応をする機会も多く、細かな配慮ができる人は採用担当者へのアピールになります。特に女性の場合は細やかな気遣いができる方が多く、外交員や保険営業、窓口対応にも向いた人が多い傾向があります。
また、金融業界では、従業員にノルマを課されることも多く、気遣いのできる人は多くの契約を獲得しやすいです。また、金融業界はチームで動くプロジェクトもあるため、メンバーと協力するという視点でも細かいことまで気付ける人は貴重な存在です。
ITやシステムの知識
金融業界はネットバンキングや、AIの進歩によるFinTechが台頭してきており、ITやシステム関連のスキルが非常に重要になってきています。業務の効率化も推進しており、窓口対応の銀行員も減少しつつあります。
そのため、ITやシステムの知識を持つ人材は重宝され、採用面でもアピール材料になるでしょう。また、近年は大手銀行でもエンジニアが不足し、ATMの不具合やシステムトラブルが発生しています。
IT・システム関連の知識を身に付けておくと、入社後も安定した働き方に繋がることが期待できます。
金融業界への転職で気を付けるべき4つのポイント
金融業界へ転職するために、どのようなポイントに注意すべきなのかを、4つのポイントで解説します。
自己分析・企業研究の徹底
金融業界へ転職する際は、自己分析で自身の強みや転職という決断に至った過程、企業のどこに魅力を感じたかを徹底的に分析・研究してください。
自分に最も合った企業を見つけるためにも、非常に重要なステップです。また、自己分析を行ったら、自分が優先したい条件も明確にしておくことをおすすめします。
そして、優先順位から自分に合った企業を探し、どのような働き方ができるか具体的にイメージしてみましょう。
応募書類に客観的な数字を用いる
金融業界への転職で重要なポイントは、わかりやすい数字でアピールすることです。主観的な表現や無駄な説明は省略し、「1カ月で〇件の成約」「マーケティングで〇%の収益アップに貢献」など、数字で実績がわかるように記載してください。
金融業界はお金を扱うという関係上、数字には厳しい仕事です。イメージのしにくい志望動機や自己PRを行うよりは、自分の力でどれくらい企業の利益に貢献できるかアピールする方が効果的です。
大手銀行よりも地方銀行や信用金庫などを狙う
給与や待遇、安定性を意識するなら大手銀行と考える方も多いかと思います。しかし、競争相手の多い大手銀行に転職するよりも、競争相手が少なく働きやすい地方銀行や信用金庫の方が転職にはおすすめです。
そもそも、大手銀行が中途採用する人材は、高度な専門性を持つ人材が多く、その中でも飛びぬけて優秀な方を採用する傾向があります。そのため、大手銀行への転職は非常に難しく、転職活動の期間が無駄に長引いてしまう可能性が高いです。
一方、地方銀行や信用金庫なら特別なスキルがなくても、入社後に必要なスキルを身に付けられます。また、AIによる自動化を導入している企業も少なく、人手を必要としているケースも多くみられます。
転職活動は在職しながら行う
転職活動を行う際は、現在の職場を辞めてから行動するのではなく、在職しながら活動を進めてください。退職してから活動を始めると、収入がなくなり、生活資金として預貯金を切り崩しながらの活動になります。
転職活動が短期間で終了すれば問題ありませんが、上手くいかなければ半年以上無職の状態が続く可能性もあります。その場合、預貯金が目減りする様子を見るだけになり、焦りで不安定な精神状態になってしまうはずです。
これまで通りの生活を送り、安定した精神状態で転職活動に臨むためにも、転職活層は在職中に行ってください。
金融業界への転職でおすすめの転職エージェント
次に、金融業界への転職を進める際、おすすめの転職エージェントのサービスを2社ご紹介します。
高年収の求人が多数掲載|ビズリーチ

ビズリーチは、ハイクラスに特化した転職エージェントです。転職エージェントの中では珍しいスカウト型で、企業の採用担当者やヘッドハンターが職務経歴をチェックし、直接スカウトを行うシステムです。
また、ハイクラス特化型ではありますが、条件を満たせば20代の方でも登録できます。ビズリーチはハイクラスのブランドイメージを大切にしているため、掲載している求人も優良企業がほとんどです。
求人条件も非常に好待遇のものが多く、高収入の金融業界求人を探すのであれば、ビズリーチを利用するのがおすすめです。
未経験者向けの求人も豊富|doda

dodaは、転職エージェントの中ではトップクラスの求人数を誇るサービスです。他の転職エージェントに比べて、大都市の求人や未経験者向けの求人が豊富な点が特徴です。
大手のサービスらしくサポートも充実しており、未経験者が金融業界への転職を目指すのであれば、登録しておくことをおすすめします。求人数が非常に多いため、金融業界の様々な求人も掲載されており、自分に合った仕事を探したいならdodaを利用すべきです。
また、dodaにもオファーシステムがあり、登録すると職務経歴や登録情報を確認した企業からオファーが届きます。プレミアムオファーというシステムもあるため、条件を設定しておけば、自分の理想に合った企業とも出会えるでしょう。
金融業界の将来性は?
金融業界のこれからはどうなっていくのか、ITの導入や企業連携の観点からご紹介します。
AIによる業務効率化が図られている
従来の金融業界はお客様との契約が多く、契約書や規約の確認など、書類作成に割く時間が多い仕事でした。しかし、書類作成は基本的にテンプレートがあるため、人間でなくてもできる部分も多くあったということも事実です。
そのため、近年はAIやDX、電子契約書の進化によって、書類作成を含む面倒な作業が大幅に効率化されています。特に大手銀行ではAI導入の流れが加速しており、中途採用の募集は少なくなってきています。
外資系企業との提携
近年は日本でも外資系企業が多く参入しており、外国の保険会社や証券会社が活動しています。日本企業の中にも外資系企業と提携し、経営基盤の安定化や新しい商品の提供を行うケースも多くなっています。
金融業界で働くことを考えた場合、外資系企業と連携している場合、海外に赴任するパターンも考えられるでしょう。そのため、金融業界でキャリアアップを目指すのであれば、英語力を鍛えておくのがおすすめです。
ネットバンキングの普及
金融機関も年々利便性が高まっており、ネットバンキングやスマートフォンアプリからの決済サービスなど、FinTech(フィンテック)の波が来ています。
FinTechはFinance(金融)とTechnology(技術)を融合させた造語で、IT技術を駆使して金融サービスと情報技術を結び付けた技術革新のことです。
大手銀行はもちろん、地方銀行の中にもIT企業やベンチャー企業と協力し、利便性の高いサービスを生み出そうとする動きが活性化しています。
これからの金融業界で活躍するには、金融知識だけでなく、ITに関する知見も必須になっていくでしょう。
まとめ:金融業界への転職は学びの姿勢が大切
金融業界への転職について、年収や魅力、注意点などを解説しました。金融業界では技術革新が年々進み、専門性の高い人材を求める傾向が強くなっています。
転職市場で自分の価値を高めるには、金融知識に加えて、最新情報にも精通して時代の流れを掴むことが重要になるでしょう。そして、常に新しい知識や技術を吸収し、自分のものとして活用する学びの姿勢も必要です。
ただ流されるままに利益を求めるのではなく、時代の流れに合わせて、自分に求められる役割を追求することが、金融業界へと転職するための鍵です。