臨床検査技師の資格を取得した方、もしくは既に臨床検査技師として働いている方で本記事を読んでいる方も多いかと思います。そして、「臨床検査技師はどこで働くことができるのか」という疑問を持っている方もいるはずです。
臨床検査技師の代表的な就職先は病院ですが、他にも就職先はたくさんあります。今回は病院と病院以外の就職先を紹介し、病院以外の就職先のメリット・デメリットも解説します。
臨床検査技師の就職先を探している方、または転職先を探している方は本記事を参考にしてみてください。
臨床検査技師の就職先とは?
臨床検査技師の様々な就職先を見ていきましょう。病院だけでなく、研究機関や一般企業もあるため、それぞれ詳しく紹介します。
病院またはクリニック
臨床検査技師が最も多く働いているのが、病院やクリニックです。大学病院や総合病院で中規模以上の病院であれば、臨床検査技師が非常に多く所属しています。
中規模以上の病院の場合、臨床検査技師は採血、血液検査、輸血、心電図、エコーなど各部門に分かれて業務を行っています。特に採血と血液検査には多くの人員が必要とされるため、臨床検査技師の多くが働く部門です。
また、クリニックでも絶対数は少ないものの、検査室を設置しているケースがあります。クリニックの場合は、その場でできる血液検査に限界があるため、生理検査がメインになります。
いずれの場合でも臨床検査技師としてコメディカルとの連携が必要ですから、医療機関で働く際はチーム医療を意識できることが重要です。
臨床検査センター
臨床検査センターは病院やクリニックから送られてくる検体を検査し、結果が出たら返信を行う機関です。病院やクリニックでは検査できない特殊な検査がある場合、設備の整った臨床検査センターで検査が行われます。
通常の血液検査や尿検査だけでなく、癌の腫瘍マーカー、遺伝子検査、アレルギー検査、細胞診なども行います。通常の病院よりも専門性の高い検査を行うことから、臨床検査技師にも高度な専門性を求められます。
一方で患者さんと関わることはほとんどなく、分業制なのでコメディカルの連携もあまり意識する必要がないでしょう。患者さんとのコミュニケーションを苦手とする方でも働きやすく、専門性を高めて働きたい方におすすめです。
健診センター
健診センターは健康診断や人間ドックなどを行う検査機関です。健診センターでは一般的に採血や心電図、エコー、レントゲン、CTなどを行っています。
臨床検査技師に関係するのは採血、心電図、エコーですから、健診センターではすべてができる人材を求められます。検診センターの規模によって臨床検査技師の人数も異なり、多くの女性臨床検査技師が働いている点が特徴です。
病院に比べて臨床検査技師と施設利用者の距離が近く、患者さんへの接遇を求められるところも多いです。病院のように夜勤がなく、部署移動もないため働きやすく、一度就職すれば長く働けるでしょう。
毎日決まった時間に仕事を始め、定時で帰宅したい方には検診センターがおすすめです。
血液センター
血液センターは正式には「赤十字血液センター」といい、日本赤十字社が運営する機関です。怪我や手術、病気で血液が不足した場合に、輸血用の血液を製造し、各医療機関に送っています。
日本の医療現場において欠かせない機関であり、ミスの許されない仕事です。血液センターは採血部門、検査部門、製剤部門、供給部門に分かれており、輸血に関わる業務全般を施設内で行っています。
病院や検診センターとは異なり、血液の製造から供給も担当している点が特徴です。輸血には一般的な赤血球の輸血パックだけでなく、血小板製剤や新鮮凍結血漿(FFP)などもあり、いずれも製造には臨床検査技師のチェックが欠かせません。
血液センターは安全な輸血を届けるため、血液に精通した臨床検査技師が働く場所です。
医薬品開発業務受託機関(CRO)・治験施設支援機関(SMO)
CROは製薬会社の治験を代行する機関で、SMOは製薬会社から治験を依頼された医療機関と契約して治験をサポートする機関です。CROで働く臨床検査技師は臨床開発モニター(CRA)として、治験のモニタリングや関連する医師へのヒアリングを行います。
また、SMOで働く臨床検査技師は治験コーディネーター(CRC)となり、医療機関に派遣されて治験のマネジメント業務や被験者と医療機関の橋渡し役を担当します。
どちらもCRO・SMOと医療機関の間で連携を取る役割があることから、コミュニケーション能力と機動力を求められる仕事です。被験者と関わることも多いことから、社会人として一定の経験を積んでいることも求められます。
臨床検査技師としての経験だけでなく、医薬品への知識など高度な医療知識も必要とされます。CROやSMPで活躍できるようになるには日々の勉強も必要ですが、最先端の医療知識を吸収できる理想的な環境です。
医療機器メーカーまたは製薬会社
医療機器メーカーや製薬会社で働く場合には、臨床検査技師の臨床経験を活かすだけでなく、プレゼンテーションも行う必要があります。臨床検査技師はアプリケーションスペシャリストとなり、医療現場のデジタルトランスフォーメーション(DX)に関わることになります。
アプリケーションスペシャリストの仕事は自社の新製品開発からアプリケーションの開発、医療機関での操作方法指導などが業務の中心です。臨床検査技師として検査業務に携わることはなく、自社製品のブランド力を高める仕事が主です。
臨床検査技師以外の資格で特に必要というものはありませんが、医療機器メーカーや製薬会社の中には本社が海外にある企業も多いです。
そのため、海外の担当者ともある程度会話できる英語力のほか、エコーや心電図などの医療機器に精通している方が有利になるでしょう。
就職先ごとの業務の特徴
紹介した就職先について、それぞれの業務の特徴を確認しましょう。就職先によって同じ臨床検査技師でも求められる役割が異なるため、どのような働き方をしたいか考えながら読んでみてください。
病院またはクリニック
病院やクリニックは臨床検査技師が働く代表的な場所で、色々な部門が設置されています。病院には血液検査、病理検査、輸血検査、採血、生理検査など色々な部門があります。
臨床検査技師が最初に就職し、必要なスキルを磨くなら最もおすすめなのが病院やクリニックです。特にコメディカルとの連携を学ぶなら病院が最適であり、検診センターやCRO・SMOなどでは経験しにくい部分です。
採血後の血液検査や細胞診、エコー検査などを幅広く経験できますから、新卒の臨床検査技師はまず病院等への就職を目指しましょう。将来的に転職をする場合も考慮するなら、大学病院や総合病院、クリニックで経験を積んでおくのがおすすめです。
臨床検査センター
臨床検査センターでは検査を行うことが業務の中心で、採血から検査結果の判定、結果の送付までを行います。病院に比べると特殊な検査も多く、臨床検査技師として専門性を高めたい場合におすすめです。
近年世界を騒がせているコロナウイルス、その検査として広く知られているPCRも臨床検査センターで頻繁に行われています。臨床検査センターは優秀な臨床検査技師が集まりやすく、専門的な知識を学びたいなら最適な就職先と言えるでしょう。
患者さんとコミュニケーションを行う機会はありませんから、検査技術と知識を身に付けたい方にも向いています。
健診センター
検診センターでは臨床検査技師が採血検査と血液検査、エコー、心電図などを行います。中でも血液検査とエコー検査は臨床検査技師が最も必要とされる部分で、検診センターにおいては欠かせない業務です。
採血と心電図は看護師でもできますが、血液検査とエコー画像の読影は専門知識のある臨床検査技師の得意分野です。また、検診センターには人間ドックや乳がん検診などで女性の利用者も多いことから、女性臨床検査技師の需要が高まっています。
病院とは違って夜勤もないことから、子育てと仕事を両立し、ワークライフバランスを重視したい方にもおすすめです。
血液センター
血液センターの業務は輸血に関わる業務が中心で、採血から血液検査、血液製剤の製造工程のチェック、品質の管理、血液製剤の調整などを行います。病院の場合は送られてきた血液製剤を適切な冷蔵庫または冷凍庫で保管し、必要に応じて引き渡す業務です。
一方、血液センターは血液製剤に関わる業務全般が中心で、病院のように生理検査や病理検査などは行いません。病院で輸血や血液関連の業務をした方なら経験を活かしやすく、日本の医療に貢献できるやりがいのある仕事と言えるでしょう。
ただし、血液検査や血液製剤の管理などが中心となるため、その他の専門性を磨くことはできません。運営母体が日本赤十字ですから経営が非常に安定しており、福利厚生も充実しているため長く働きたい方におすすめです。
医薬品開発業務受託機関(CRO)・治験施設支援機関(SMO)
CROまたはSMOで働く場合には、治験におけるスケジュール調整や医療機関の支援、被験者との面談、医師と被験者の調整などが業務です。新薬が安全に投与でき、かつ安全に遂行できるようにサポートすることが業務の中心になります。
臨床検査技師としての検査業務よりもマネジメントが中心となり、関係職種や被験者とのコミュニケーションが重要です。治験結果のレポートをまとめる必要もあり、PCを使用した事務作業の能力も必要とされます。
治験の計画全体を俯瞰し、スムーズかつ安全に進められるようにコーディネートすることが大切です。
医療機器メーカーまたは製薬会社
医療機器メーカーや製薬会社では、主に自社製品の操作方法の説明やプレゼンテーション、新製品の企画立案などが業務になります。臨床経験豊富な臨床検査技師であれば、臨床での不便さや必要とされる機能などがイメージできます。
経験を活かした仕事をするという点で、医療機器メーカーや製薬会社は臨床検査技師にとって働きやすいでしょう。また、コミュニケーション能力に自信がある方の就職や転職もおすすめです。
全国展開している企業では出張もありますから、フットワークの軽さとコミュニケーション能力を求められます。エコーに関する専門知識も活かせますから、臨床検査技師の経験を活かしやすいでしょう。
臨床検査技師が病院以外で働くメリット・デメリット
臨床検査技師の就職先には病院以外の選択肢も多いですが、メリットとデメリットもあります。どのようなポイントがあるか理解することで、就職先選びも効率的に進められるでしょう。
病院以外で働くメリット
病院以外の職場によくあるメリットとしては次のものがあります。
- 夜勤がない
- 成果に応じて給与が上がる
- ワークライフバランスをとりやすい
- コミュニケーション能力を活かせる
上記のメリットは病院以外だからこそです。病院では夜勤や残業が入るため、ワークライフバランスが乱れやすい環境にあります。
病院以外の職場では成果報酬制、土日祝日が休日でワークライフバランスを重視している職場も多いです。また、病院に比べて人とのコミュニケーションをとる機会も多く、患者さんの生の声を聴くことができます。
就職先に上記のメリットを求めたい方は、病院以外への就職がおすすめです。
病院以外で働くデメリット
病院以外で働く場合のデメリットも見ていきましょう。
- スキルアップしにくい
- 社会人経験が必要
- 検査業務はほとんどない
病院以外の就職先では専門性を活かすことはできるものの、スキルアップがしにくいという難点があります。臨床検査技師としての実力を磨くなら病院が最適ですから、スキルを磨きたい方は病院に就職するほうがよいでしょう。
また、病院以外の職場では一定の社会人経験を必要とされることもありますから、新卒の臨床検査技師では採用されない可能性もあります。デメリットも理解したうえで病院以外への就職を選びましょう。
まとめ:臨床検査技師としてのスキルアップも考えて就職先を選ぼう
臨床検査技師の就職先は数多くありますが、どの就職先を選ぶにしても、最初はスキルアップを優先するのが理想です。臨床経験があるからこそ採用される就職先も多いですから、最初は自分の磨きたいスキルを考慮して働きましょう。
スキルがある程度習熟したら転職を考えるのがベターです。臨床検査技師の就職先は病院以外に限られないからこそ、最初に専門性を高めておくことで選択肢が広がります。
病院以外の職場にも、ワークライフバランスや特定の専門性に特化したメリットがあります。病院以外の就職先を選びたい方は、キャリアやスキルも意識して働く場所を選んでみてください。