【作:イルカさん】
転職をしようと考えている人の中には、
「転職をすると、年収が下がるのではないか」
「希望年収よりも低い額を提示されたら、どうしよう」
などと悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
「せっかく転職するのであれば、希望の仕事に就きながら年収も上げたい/キープしたい」そう考える方のために、年収ダウンを避ける方法と転職で年収が下がる理由を紹介します。
年収が下がる理由を知れば、それを避けて年収アップを狙うことも可能です。ぜひ本記事を参考に、年収ダウンを避けて転職しましょう。
まず、転職で年収が下がる理由にどんなものがあるのかを紹介します。
転職で年収が下がる8つの理由
転職で年収が下がる理由は、主に下記8つに分類されます。
1.異業種・異職種への転職
異業種・異職種への転職を目指す場合、未経験としての転職になるため、わかりやすく年収が下がる場合が多いです。企業が未経験の中途人材を欲しがるのは、「他業種・他職種からの新たな視点で物事を診てもらい、仕事の進め方や組織のあり方を改善したい」、「経験者を採用したが、仕事のやり方の癖がついているので未経験人材を採用したい」などの理由です。
企業側からすれば未経験者なので極端にいえば新卒社員でもいいわけですが、「社会人マナーから教えるほどの手間はかけられない」、「仕事の進め方や仕事の流れくらいは把握しておいてほしい」という場合に、未経験人材の中途採用を行います。
現職の年収はこれまで積んできたスキル・経験を活用した仕事ができるからもらえているわけです。そのため、新卒プラスアルファのスキル・経験しか求めていない仕事に転職すれば、現在の年収よりも下がる可能性は極めて高くなります。
POINT
企業側の立場になって考えてみると当然なのですが、当事者になると年収が下がることに納得できないということも考えられます。冷静に状況を見るためにも、この観点を忘れないように注意しましょう。
2.大手から中小企業への転職
同業種・同職種での転職であっても大手から中小企業へ転職した場合、年収が下がることも多いです。大手企業での勤務は、安定的な高い売上・低い採用コスト・多数の子会社/パートナーの協力による設備投資の低減など、多くのメリットがあります。
このような理由で大手企業は余計なコストがかからず、安定した売上を持っているため、社員に年収で還元できるというわけです。逆に中小企業は大手企業の逆であるケースが多いので、年収ベースが下がる可能性が高いです。
3.必須要件を満たしていない
稀に採用の必須要件を満たしていなくても、ポテンシャルに期待して採用されることもあります。しかし、その場合は必須要件を満たしている人材に比べて成果を上げられる可能性が低いため、年収を低く見積もられることも考えられます。
「採用してもらえる」と喜ぶだけでなく、条件面がどうなるかは忘れずに確認しておきましょう。
4.待遇や手当の確認不足
前職と同水準の年収で転職したはずなのに、「気がついたら可処分所得が低くなっている」というケースは意外に多いです。そうならないように、現職で自分がどんな待遇や手当に助けられているのか、転職前によく確認しておくようにしましょう。
例えば、住宅・子供手当、施設利用の割引、他手当で日常的に使っているもの、生活費に充てているものがないかは確認しておいてください。また、募集要項を見るときには固定残業代を含んだ給与表記になっていないか、手当の対象に自分が入っているかをよく確認しておくと、転職後の可処分所得を減らさずに済みます。
5.業務時間の削減
ワークライフバランスをとりたいと考えて転職をしたものの、業務時間が削減されたことで残業代が出ず、一気に手取り年収が下がったと感じる方もいます。
年収を上げることよりもワークライフバランスの優先度が高い場合は、残業をなくすことでどのくらい年収が下がるのか、下がった年収で自分の生活が継続できるのかのシミュレーションをしておくと安心です。
6.交渉不足
年収が下がる要因のひとつに、年収の交渉不足があります。企業側としては「できるだけ固定費を上げたくないし、本当に成果が上げられる人材かわからない状態で高い給与は出せない」という考えがあるため、企業側から「採用時の年収を上げましょう」と言われることはなかなかありません。
本来「年収600万円程度の働きをしてくれるかもしれない」と思っている人材でも、年収550万円、その後成果に応じて昇給という提示で納得してもらえるようであれば、そのまま採用するケースが多いでしょう。
これを覆すには、自分が確実に年収600万円に値する成果を上げられる人材だという証明をして納得してもらう必要があります。トラブルにならないようなコミュニケーションをとりつつ交渉を行うため、非常に難易度の高い交渉といえます。
7.首都圏から地方への転職
首都圏から地方への転職も、年収が下がるパターンのひとつです。平均賃金などを見ればわかるように、地方に比べて首都圏の年収は高く設定されています。
家賃も物価も安い地方に引っ越して転職した場合、年収は下がるケースがほとんどです。近年はコロナ禍で住む場所に影響されない求人もありますので、そのあたりを狙っていけば、地方への移住、年収をキープした転職という希望を満たすことも可能です。
8.焦り
転職で年収が下がる理由の最後は、「焦り」によるものです。「転職前に退職をしてしまった」、「現状から逃げる先を見つけるために早く転職したい」などの焦りがあると求職者としての魅力が半減しますし、転職先を選ぶ判断を誤りやすくなります。
焦った状態を作り出さないためにも在職中に転職活動を行い、「今回の転職では何が実現できればOKなのか」を明確にしておくと、冷静な判断が下せるでしょう。
転職で年収が下がる人の割合は?
では実際に転職で年収が下がる人はどのくらい存在するのか、雇用動向調査のデータを紹介します。
「転職で年収が上がった(1割未満の増加~3割以上の増加)」約34.2%、「変わらない」が約28.2%、「転職で年収が下がった(1割未満の減少~3割以上の減少)」約36.7%という結果が出ていました。
出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)「雇用動向調査 2021年上半期」
転職で年収が上がった人に比べて年収が下がった人の割合が2%程多く、転職による年収ダウンは珍しくないことがわかります。年収が上がったという事例を目にすることが多いように感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実際は年収が下がった人の方が多いのです。
転職で年収が下がらないための対処法
それでも、転職で年収が下がるのを避けたい方のために、対処法を紹介します。
1.利益率の高い業種を選ぶ
利益率の高い業種を選べば、自然と年収が上がりやすくなります。利益率が高い=仕入れが発生しない仕事です。
例えば飲食・製造など食べ物の提供や物を作っている会社の場合、仕入れ・つくる・運ぶなどの工程が必要になります。売上からその仕入れ費・仕入れや運ぶ際の人件費などを捻出するため、どうしても利益率が低くなってしまいます。
しかし、コンサルティングなど頭で考えるもの、情報・広告などの無形商材を扱う業種の場合は、仕入れそのもの、また仕入れや運ぶ際の人件費などもかかりません。そのため、利益率が高い傾向にあるのです。
こうした事業構造を理解しておき、転職先を考えるときに、利益率の高い業種から選んでいくようにしてください。そうすれば、年収が上がる可能性を高められます。
2.将来性のある業種を選ぶ
将来性のある業種を選ぶことも、転職で年収を上げるコツのひとつです。
ペーパーレス化が進む今は、印刷・広告・新聞・出版など紙に印刷する事業は将来性が厳しいといわれています。反対にコロナ禍で外出自粛があった影響で伸びが著しいEC・非接触やリモートワークが増えたことでさらなる地位を確立したIT・動画配信などで急激に伸びているエンターテインメントなどは将来性が期待できる業種といえます。
時代の流れとさまざまな業種の動きを見ておくと、成長する業種を見極めることも可能です。
3.異領域は社会人インターンなど別ルートから転職をする
異業種・異職種の場合は未経験での転職となるので、年収が下がりがちです。そのため、
異業種・異職種など異領域に挑む場合は、一般的な転職活動ではなく社会人インターンなどの別ルートから接触を図り、ポテンシャルと実務能力を見てもらってからの転職をおすすめします。
実際一緒に働けば単なる未経験者という枠組みで見ることがなくなるため、仕事に対する正当な評価をもらえて、年収が下がる可能性を限りなく低くできます。
4.自身の市場価値を高める経験を積んでおく
自分自身が関われる業務で他社でも通用しそうな経験や資格があれば、積極的に経験し自分の市場価値を高めておきましょう。
そうした積極的な姿勢は、毎日の仕事に忙殺されるだけでなく、キャリアに対してもアクティブに動いているというアピールにもなるので一石二鳥です。
5.年収の最下限と上限を決め、その許容範囲で転職先を探す
年収の最下限を決めずに転職活動をしていると、活動していくうちに基準が曖昧になって悪い条件を飲んでしまうことも考えられます。
まずは今の自分の生活費を計算し、受け入れられる最下限の年収と上限年収を決め、その範囲で転職先を探すのがおすすめです。その範囲外の求人は検討に入れないと決めて活動すれば、判断を誤ることもなくなるでしょう。
年収100万下がる転職の場合などは、生活ができなくなってしまうこともありますので世帯年収が転職後にどうなるかも考えておきましょう。
一般的な年収ダウンの許容範囲は年収の10%ダウンととされています。
6.給与交渉をする
年収を下げないようにするためには、内定承諾をする前の給与交渉が重要です。自分が決めていた最下限と上限の範囲内であっても、今後の自分の貢献を考えて交渉を行ってください。
先方の提示額からあまりに離れていると交渉決裂・怒りを買うケースもあるので注意が必要ですが、採用時の年収は実務とは違って面接でしか判断していないため、成果を上げられる根拠を用意して交渉すれば検討してもらえる可能性が高いです。
内定取り消しのリスクをがあるから給与交渉をしないという方もいるかもしれませんが、そもそも交渉自体を受け付けてくれないような企業であれば、別の会社を選んだほうが良い可能性が高いです。
デリケートな問題なので交渉の仕方に工夫は必要ですが、きちんと自分の主張をする姿勢を見せておくことは、入社後に適切な関係性を構築するためにも重要です。
7.ポテンシャルで採用してもらえる時期に転職をする
これは年齢が限られるチャンスですが、ポテンシャルで採用してもらえる時期に転職をするのも年収を下げないおすすめの方法です。
第二新卒と呼ばれる年代である程度の経験値を積んでいれば、異業種・異職種で、かつ大手企業に転職することも可能です。そうすれば年収が下がるどころか、大幅な年収アップを叶えることも夢ではありません。
8.スキルを活かせる職場に転職する
異業種・異職種の転職で年収が下がると申し上げましたが、同業種・同職種の場合はスキルを地続きに活かせるため、逆に年収を上げられる可能性が非常に高いです。そのため、どうしても異領域で働きたいという要望がない場合は、同業種・同職種での転職をおすすめします。
まとめ:転職で年収が一時的に下がるのはあり?なし?
結論から申し上げると、転職で年収が一時的に下がるのは、「あり」です。なぜなら、年収が下がる転職がすべて悪い転職というわけではないからです。
異領域への転職、ワークライフバランスをとるための転職、U・Iターンを実現するための転職など、希望を叶えるために年収が下がる転職をあえて選ぶ方もいます。これらの転職をする場合、年収が一時的に下がることは致し方ないことです。
逆に未経験領域・残業の低減・収入差がある地域へ転職する場合などは、今の年収をキープしようとしてしまうと、いつまで経っても転職できません。今下がるかどうかを気にするのではなく、今後上げていける見込みがあるかどうかに注目しましょう。
そのため、「既に上が詰まっていて昇進できない・昇進したとしても前職の給与に及ばない」などの状況がないか、転職前に確認しておいてください。
転職をする際に一番重要なのは、「本来転職で実現したかったことが叶う転職先かどうか」です。転職で年収が下がることに囚われすぎず、望む生活とキャリアが叶う転職先か、転職後に後悔しないかどうかをきちんと見極めるようにしてみてください。そうすれば、納得したキャリアを歩める良い転職になるはずです。
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