診療放射線技師は病院やクリニック、健診センターなど、放射線検査・治療の行われる場所で広く働いています。診療放射線技師がいなければ、患者さんへの基本的な検査も行えないため、医療機関にとって縁の下の力持ちと言える仕事です。
今回は診療放射線技師の求人と就職について解説するとともに、就職・転職で注意すべき点も併せて紹介します。
これから就職・転職を考えている診療放射線技師の方は、本記事を参考に優良な求人とそうでないものを見分ける方法を身に付けてください。
診療放射線技師の需要の状況
診療放射線技師の求人事情について、需要の側面から解説します。診療放射線技師の雇用形態や働く場所を確認しましょう。
新卒・経験者問わず募集が多い
これから診療放射線技師として就職・転職を目指す方にとって、気になるのが「経験による採用率の違い」でしょう。経験が浅いと採用されにくくなると考え、就職・転職活動前から不安を抱く方も多いかと思います。
しかし、診療放射線技師に関しては、新卒や未経験、経験が浅くても、採用されやすいため問題ありません。
職業情報提供サイトjobtagの調査結果によると、入職前の実務経験は46.2%が「特に必要ない」となっており、合計で7割以上が1年以下の経験でも問題なしとしています。
実務経験が多いに越したことはありませんが、新卒や経験の少ない診療放射線技師であっても、採用率には大きく影響しないことがわかります。条件にこだわりすぎない限りは、診療放射線技師の募集は多いと言えるでしょう。
参考:厚生労働省 職業情報提供サイトjobtag 診療放射線技師 入職前後の訓練期間、入職前の実務経験
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/163
全国的に見てもニーズが高い
新卒や経験の浅い診療放射線技師以外の需要についても、全国的には高い状況となっています。診療放射線技師のニーズを示すデータとして、ハローワークの求人統計データがあります。
データによると、令和3年度の診療放射線技師の有効求人倍率は1.16となっており、診療放射線技師1人に対して、1.16件の求人がある状況です。
また、産業別労働者過不足判断DIでも、正社員・臨時・パートの診療放射線技師が不足しているという結果が出ており、人手不足の状態です。つまり、全国的に見れば診療放射線技師は不足している状況であり、多くの求人を目にすることができるでしょう。
自身の興味や専門分野といった条件はあるものの、診療放射線技師の求人は多く、ニーズの高い職業と言えます。
参考:厚生労働省 職業情報提供サイトjobtag 診療放射線技師 ハローワーク求人統計データ
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/163
9割近くの診療放射線技師が正社員として働いている
就職・転職で気になるポイントとして、正社員として働けるかどうかが問題です。産業別労働者過不足判断DIによると、正社員の診療放射線技師が最も不足した状態です。
また、診療放射線技師は9割近くの方が、正社員の雇用形態で働いています。そのため、就職・転職では、正社員の採用率が高いことが見込まれ、雇用条件を過度に不安視する必要はありません。
それでも不安の強い方は、いくつかの施設を併願し、自分に合った職場を見つけられるように活動してください。
参考:厚生労働省 職業情報提供サイトjobtag 診療放射線技師 一般的な就業形態
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/163
働く場所は医療機関や医療機器メーカー
診療放射線技師が働く主な場所は、病院・クリニック・健診センターなどの医療機関、CTやMRIの開発・販売を行う医療機器メーカーです。基本的には就業場所で仕事内容、働き方も大きく変わり、事前に情報を収集しておくことが大事です。
ただし、医療機器メーカーは一定の実務経験、病院での勤務経験を積んだ方が採用されやすいため、新卒の方は医療機関に就職することをおすすめします。
大規模な病院では、モダリティによって人員が配置されており、1つの専門性を高めるのに向いています。一方、小規模な病院やクリニックの場合、診療放射線技師1人が担当するモダリティも多くなり、幅広い業務を経験できるでしょう。
どちらを希望するか、キャリアプランとの兼ね合いも考えながら、就職先は慎重に選んでください。
就職先を選ぶ際の4つのポイント
診療放射線技師が就職先を選ぶ場合、どのようなポイントで選べばよいのでしょうか。4つのポイントにまとめたので、職場選びの参考にしてください。
専門性とやりたいことを明確にする
就職・転職で最も大事なのは、自分の専門性を何にするか、仕事においてやりたいことを明確にすることです。病院によっては、診療放射線技師がモダリティで分かれており、必ずしも自分の専門性を活かせるとは限りません。
また、専門性を高めたい方にとっては、1人で幅広い業務をこなすのは専門性を高めにくく、ミスマッチの原因になります。そのため、自分が診療放射線技師として何を大事にしているのか、どんな働き方をしたいのかを明確にすることが大事です。
専門性や就職後の目標を明確にすることで、理想の職場への就職に近づくことができます。
施設の規模で将来のキャリアアップも考える
どの施設に勤めるかですべてが決まるわけではありませんが、キャリアアップを考えるなら、大規模病院に勤務することもおすすめです。大規模病院は一定数の診療放射線技師を確保しており、新卒も経験者も年齢も問わずに応募できます。
また、規模の大きさは給与や教育制度・水準、福利厚生などの面にも直結するため、キャリアアップを狙うならある程度規模の大きな病院への就職を目指しましょう。
一方、規模の小さい病院にもメリットはあり、少ない人員で業務を行っているため、経験できる業務の幅が広いことが挙げられます。
色々な業務を経験できるということは、将来的に転職する際もアピールポイントにしやすく、有利な条件で他の採用候補者と競争できます。
施設を選ぶ際は、将来どんな診療放射線技師になりたいか、キャリアアップのことまで考えて判断してください。
求人票で業務内容と範囲を確認する
規模が同じくらいの施設であっても、診療放射線技師の担当する業務範囲や業務内容は様々です。求人票で業務内容・範囲を確認して、業務と給与のバランスはとれているか、自分の知識やスキルと合っているかを確認してください。
自分の理想とする働き方と、現実の働き方にギャップがあると、そのギャップが大きいほど離職率は高まります。求人票に記載された業務内容が気になる時は、思い切って応募段階で採用担当者に相談してみましょう。
早期離職は自分にとっても、就業先にとっても大きな損ですから、ミスマッチを起こさないためにも、業務内容と範囲の確認は忘れずに行ってください。
就業先の診療放射線技師の人数を把握する
就業先を選ぶ際は、既に在籍している診療放射線技師の人員についても確認しましょう。求人票には詳しく記載されていないこともあるため、その場合は応募の段階で採用担当者に質問することをおすすめします。
なぜなら、就業先の人員は、就職後の働き方にも影響するポイントとなるからです。施設の規模や放射線課の規模に対し人員が少ない場合は、1人で担当する業務量が多くなり、激務になりやすいです。
また、診療科毎の医師数も併せて把握しておけば、どのような検査が多くオーダーされるかという判断基準にもなります。就職が決まっても、体調を崩してしまっては元も子もありません。
施設を選ぶ際は、所属する診療放射線技師の人数を確認しましょう。
診療放射線技師が就職・転職を進める際にやっておきたいこと
これから就職・転職活動を始める診療放射線技師の方のために、準備段階で進めておきたいことを紹介します。就職・転職活動は、準備次第で採用率が大きく変わります。
早めに対策を行い、就職・転職活動に備えてください。
履歴書と職務経歴書の作成・添削
就職・転職活動の基本は、履歴書と職務経歴書の作成及び添削です。履歴書・職務経歴書は、就職・転職活動で必須のツールであり、採用担当者へのアピールポイントにもなります。
履歴書・職務経歴書は時間が経つと見方も変わり、改善点も見えるようになります。作成したら1日時間を置いて見返す、または他者の意見を取り入れるようにしましょう。
自分だけでは気づけないポイントも、他者からの意見で気付くことがあります。就職・転職活動を始めるにあたって、まずは履歴書・職務経歴書を作成し、採用担当者にアピールできる内容を意識してください。
優先順位の明確化
就職・転職活動においては、自分にとって優先すべき条件を明確化しましょう。給与や雇用条件、教育制度、専門性など、自分が就業先に求める条件を優先順位に応じて明確にしておくことがポイントです。
条件に優先順位をつけることで、企業の求人内容をチェックする際も、判断基準の1つとなります。優先順位は理想の就業先を発見する対策の1つであり、就職・転職活動を始めるにあたってやっておきたいことの1つです。
優先順位の高い条件に適合する職場から応募し、理想の職場への就職を実現してください。
自己分析と企業研究
就職先を選ぶには、自分の長所・短所などを把握する自己分析と、就業希望先のことを詳しく理解する企業研究は欠かせません。自己分析を行うことで自身の適性を客観的に理解できるとともに、企業との適性を判断する指標にもなります。
自己分析はミスマッチを防ぐ有効な対策の1つでもあるので、応募する前に実施しておきましょう。
また、企業分析は自分の適性との合致や面接対策にもなるため、事前に行っておくことで就職・転職活動を有利に進められます。自己分析と企業分析を早めに行い、就職・転職活動をスムーズに進めてください。
転職なら医療職専門の転職エージェントに登録する
診療放射線技師として実務経験のある方なら、転職エージェントを利用する方法もおすすめです。既に働いている方の場合、仕事時間も有効に転職活動に活用するため、転職エージェントに仕事を探してもらう方法も効果的だからです。
転職エージェントは希望条件を伝えれば、条件に適合する職場を紹介してもらえます。また、履歴書・職務経歴書の添削、面接日程の調整、年俸交渉なども行ってもらえるため、転職活動の負担が大幅に減少します。
働きながら転職活動を進める場合は、転職エージェントの活用がおすすめです。
就職したら後悔しやすい職場の特徴
就職すると後悔しやすい職場の特徴も紹介します。紹介する特徴に当てはまる職場の場合、ミスマッチに繋がやすいため注意してください、
当直の業務量が夜勤とほぼ同じ
求人票からの情報だけでは把握できませんが、当直のある職場では、業務量について確認することも大事です。当直と夜勤は業務の内容が異なり、当直の方が軽めの業務という規定があります。
しかし、当直でも夜勤と同じ業務量の職場は少なからず存在しており、業務の負担はその分大きくなります。当直のある職場に応募する場合は、どのような働き方になるのか、業務量はどの程度なのか確認しましょう。
業務量が負担になると感じる場合は、無理をせずに断ることも大事なポイントです。
他の職場より給与が明らかに高い
就職後に後悔する職場の特徴として、他の求人と比較して明らかに給与が高いケースも当てはまります。なぜなら、他に比べて給与が高い職場は、極端に業務量が多いか、人員が不足しているケースが多いからです。
いわゆるブラック企業というものに当てはまり、働くうちに心身の不調に繋がりやすい危険な職場です。若いうちは問題なくても、将来的に体調を崩すおそれもあるため、業務の負担がどの程度かチェックしておくようにしましょう。
他より明らかに給与が高い職場には、何らかの事情があることが多いため、十分に注意してください。
教育体制が整備されていない
将来のキャリアプランにも関わるポイントには、教育体制の状況も大きく関係します。一定の規模を持つ病院の場合、ほとんどが体系的な教育体制を整備しています。
しかし、稀に教育体制を整備しておらず、新卒で入っても、まともな教育を受けさせない職場があることも事実です、そのため、求人票に教育体制が書かれていても、実際の様子を採用担当者に確認してみましょう。
また、職場見学で職員の様子や雰囲気を確認することで、教育が行き届いているか確認することもできます。教育体制の整備されていない職場では、資格取得やキャリアプランの形成にも障害が予想されますから、後悔しないように十分チェックしてください。
いつ見ても求人票が掲載されている
ハローワークや求職サイトを確認した時、いつ見ても求人が掲載されている職場は要注意です。そのような職場は、就職してもすぐに退職してしまう人が多いか、退職者が多くて、そもそも人員不足のケースが多いからです。
入職後に激務になることが予想され、体調を崩して働けなくなるかもしれません。特に条件は良いのにいつも求人されている場合、ブラックな職場である可能性はさらに高まります。
就職後に後悔する前に、悪徳な求人には引っかからないように注意しましょう。
まとめ:診療放射線技師の求人は今後も増加が期待できる
診療放射線技師は多くの医療機関で必要とされており、有効求人倍率も高い水準を維持しています。医療機関において、放射線検査と治療は欠かせない存在で、プロフェッショナルの診療放射線技師は必要な存在です。
今後も診療放射線技師の需要がなくなることは考えにくく、医療現場にとって必要とされるでしょう。自身の専門性や目標、キャリアなどを総合的に考え、診療放射線技師としてのステップアップに繋げてください。