医療施設で採血や検体検査、超音波検査などを担当する臨床検査技師。医療現場では、検査と診療が密接に結びついていることから、検査のプロフェッショナルである臨床検査技師は医療を支える大切な仕事です。
今回は臨床検査技師の職場について紹介するとともに、全国的に見た求人状況などを解説します。キャリアアップのために就職・転職を考えている方、現職とは違う職場を経験したい方など、就職・転職を視野に入れている臨床検査技師の方は、本記事を参考にしてください。
臨床検査技師の就業者数と求人事情
臨床検査技師は全国的にどのくらい働いているのか、将来性はどうなのかを解説します。どの時期から求人が増加するのかも含めて解説するので、就職・転職活動開始時期の参考にしてください。
就業者数は全国で7万人以上
臨床検査技師は平成27年の国勢調査によると、全国で7万6,480人が勤めており、現在も緩やかに増加しています。臨床検査技師の働く場所は検査の多い医療機関のほか、検査を専門とする臨床検査センター、健康診断やドックを行う健診センターなど多様です。
また、一般企業で働く臨床検査技師もおり、医療に関係する分野だけでなく、民間企業まで選択肢は豊富にあります。新卒の臨床検査技師の場合は、医療機関で働くことも多く、若手のうちに臨床経験を積む方が多いです。
ほとんどの病院には臨床検査室が設置されているため、病院からの求人がなくなることは考えにくい状況です。
参考:厚生労働省 職業情報提供サイトjobtag 職業詳細 臨床検査技師 就業者統計データ
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/161
8割以上が正社員で働いている
臨床検査技師は医療系の国家資格の1つであり、就職においても有利に条件で採用されやすい職種です。就業形態でも8割を超える方が、正社員として雇用されており、安定した社会的地位と給与が期待できる資格です。
また、働き方の柔軟性も比較的高く、育休・産休の方はパートタイムとしての勤務や、立ち仕事の少ない超音波検査室での勤務もあります。施設によって対応は異なりますが、国家資格の有資格者としての十分な待遇を受けやすいでしょう。
また、平均年収は496万5,000円となっており、給与面でも他の医療職よりやや高い結果です。正社員としての採用を期待するのであれば、臨床検査技師には十分な可能性があります。
参考:厚生労働省 職業情報提供サイトjobtag 職業詳細 臨床検査技師 就業者統計データ
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/161
有効求人倍率は1.42倍
全国的な臨床検査技師の有効求人倍率を見ていくと、令和3年度は1.42倍となっています。臨床検査技師1人に対して、1.42件の求人がある計算となり、非常に採用されやすい状況です。
都道府県によっては求人倍率が2倍を超える地域もあり、人材不足には地域差があります。逆に、有効求人倍率が1倍を下回る地域もあるため、どの地域で求人を探すか次第で、キャリアプランにも大きな影響があるでしょう。
また、有効求人倍率と給与はお互いに比例しやすい関係にあり、有効求人倍率の高い地域では給与も高くなりやすいです。将来的な働き方や生活まで考えるなら、都道府県単位の有効求人倍率はチェックしておく必要があるでしょう。
参考:厚生労働省 職業情報提供サイトjobtag 職業詳細 臨床検査技師 就業者統計データ
https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/161
求人が増え始めるのは9月頃から
臨床検査技師の求人は、6月頃から少しずつ掲載が始まり、9月頃から増加する傾向があります。特に求人数と就職・転職活動のピークになるのは11月~12月に掛けてで、この時期は多くのライバルと競い合うことになるでしょう。
そのため、就職・転職活動を始めるなら、なるべく早めに活動を始め、ピークの時期には重ならないようにするのが理想です。早い人では4月頃から活動を始めており、本格的な求人が始まる前に十分な準備を進めています。
すぐに準備を始めるのが難しい場合でも、筆記試験対策として一般教養や検査の基礎知識の振り返り、論文試験の準備は進めておきましょう。特に論文試験は、普段からアウトプットをしていないと記述が難しいため、問題集などで練習しておくことが大事です。
専門資格を持つほど高収入が狙いやすい
高収入の職場は、自然と求められる技術・知識レベルが高くなるため、専門資格を取得しているほど有利です。特に転職者の場合は、臨床経験を積んで超音波検査士、細胞検査士、一級・二級臨床検査士、認定輸血検査技師などを取得するのがおすすめです。
自分のキャリアプランと就職・転職する職場にもよりますが、高い技術力を証明できれば、入社後も即戦力として好待遇を受けられます。
特に、一級臨床検査士はキャリアアップに欠かせない資格ですから、条件を満たした方は取得を目指しましょう。
また、専門資格を持っていなくても、就職・転職後に取得したい資格を明確にしておくこともポイントです。はっきりとした目標があれば、採用担当者から高い評価を受けやすいからです。
専門資格を自分なりの武器にして、就職・転職を成功させてください。
臨床検査技師が代表的な職場
臨床検査技師が働く職場はいくつかあるため、代表的な職場を5つ紹介します。キャリアプランを考えている方は、施設によって将来の選択肢が大きく変わりますから、それぞれの特徴を見極めて選びましょう。
病院やクリニック
病院やクリニックは、臨床検査技師が働く代表的な職場です。病院では採血、血液検査、輸血業務、細胞診検査、超音波検査、心電図など多くの臨床検査技師が働いています。
採血・超音波検査・心電図の検査では、患者さんと直接コミュニケーションを図る機会もあり、患者さんの元気な姿を見るのがやりがいの1つにもなるでしょう。
また、クリニックは地域住民が多く受診することから、病院よりも患者さんとの関係性が強くなりやすいです。地域の住民の医療に貢献するという点で、繋がりの深い患者さんの回復は大きなやりがいにもなります。
環境的にも現場経験とキャリアアップもしやすく、臨床検査技師が勤務するにはおすすめです。
臨床検査センター
臨床検査センターは、検査を専門的に行う機関です。一般的な検体検査をはじめ、他の医療機関では設備の問題で実施できない、または病院ではできない特殊な検査などを専門的に行います。
患者さんと関わる機会はほとんどなく、検査に集中できる点が特徴です。臨床検査技師としてのスキルアップもしやすく、専門性を高める点でもおすすめの職場です。
保健所
検査以外の知識や業務を経験するのなら、保健所もおすすめの職場です。検査業務は少ないですが、地域の食品衛生の許認可業務や衛生管理のチェック、必要なら調査と指導も行う仕事で、地域の公衆衛生全般に関係する仕事です。
公務員という地位になることから、安定した給与と昇給も期待できます。就職・転職には年齢制限と公務員試験、2つの条件をクリアする必要がありますが、長く働くなら他の職場よりもおすすめです。
注意したいのは、求人が常に出ていないことと、臨時の求人が多いことです。正式に採用される人員は少ないですが、チャンスがあれば狙うのもよいでしょう。
医療機器メーカー
臨床検査技師が医療機器メーカーで働く場合、製品の企画・開発、営業支援、病院の医師や看護師への操作説明など多方面で活躍できます。アプリケーションスペシャリストとして働く道もあり、多くの臨床検査技師が働いています。
医療機関とは違い、企業の業績や成果報酬制を採用しているところが多く、仕事の頑張りが給与に反映されやすい職場です。外資系企業に勤務した方の場合は、年収が1,000万円近くになることもあり、給与面では好条件が期待できます。
医療機器メーカーは他社との製品開発競争になりますが、新しい医療機器を開発したい方、コミュニケーション能力の高い方にはおすすめの職場です。
就職・転職活動でしておきたい準備とやってはいけないこと
就職・転職活動を効率的に進めるには、しっかりと準備を行い、同時にやってはいけないことを理解することが大切です。就職・転職を成功させるためにも、ポイントを押さえて活動を進めましょう。
就職・転職の成功は準備で決まる
就職・転職活動を上手く進めるためには、早めに準備しておくことが最も重要です。特に事前準備として、次の事項は行っておきましょう。
- 希望条件の明確化
- 自己分析
- 職種研究
- 知識の振り返り
- 志望動機の検討
上記の内容は、求人が本格的に増加する前からできることであり、ほとんどの求人で共通して必要なポイントです。特に自己分析と職種研究は、職場選びにおいても重要な判断材料になります。
就職・転職活動時期の間近になって始めるよりも、余裕を持って準備しておく方が対策も立てやすいです。他の就活生・転職者の活動もチェックして、自分に足りないものはないか考えながら進めてください。
こだわりすぎは失敗のもと
就職・転職活動でやってはいけないこととして、「こだわりすぎる」というものが挙げられます。こだわりすぎとは、次のようなものです。
- 病院のネームバリューにこだわる
- 給与水準にこだわる
- 業務内容で自分の好きな分野にこだわる
- 単願志望にこだわる
- 病院だけにこだわる
上記のこだわりを強く持ちすぎていると、それだけ求人の選択肢を狭くしてしまいます。就活生の場合は、学校によって併願禁止のところもありますが、学校の決まりよりも自分の人生の方が重要です。
就活期間に余裕があるうちは単願志望でもよいですが、残り時間が少ない状況では、自分の首を絞めるだけです。就職活動が上手くいかない時には、併願志望も考えましょう。
また、転職希望の場合は、前職との給与の差が認められない方、専門分野にこだわる方も少なくありません。臨床検査技師の給与は、基本的に経験年数と勤務年数に大きく左右されます。
給与が前職より低くても、まずは雇用条件を精査してみることが大事です。専門分野についても、新しい分野を経験することで興味が出ることもあるため、選択肢から外さないようにしましょう。
就職・転職活動では、「こだわりすぎ」は良くありません。自ら選択肢を少なくするのではなく、条件を緩めて幅広い求人を検索してください。
臨床検査技師が働く場所を選ぶ際のポイント
臨床検査技師が自分の理想にマッチし、優良な職場を選ぶためのポイントを解説します。職場を慎重に選ぶことは、就職後のミスマッチを予防し、長く働いていくためにも大事なポイントです。
希望条件や優先順位をあらかじめ決める
就職・転職活動をスムーズに進めるには、まず求人における希望条件を明確にすることと、条件の優先順位をつけることです。就職するために最低限必要な条件として、次の内容は最初に明確化しておきましょう。
- 雇用形態(正社員・パート・派遣など)
- 働き方(日勤・夜勤・当直など)
- 勤務先(通勤しやすい距離)
- 給与(基本給・昇給・賞与の有無など)
- 福利厚生(社会保険・年金・その他)
- 休日(年間休日数・週休二日制・完全週休二日制など)
- 教育・研修制度(教育カリキュラム・資格取得の補助など)
こうした条件は働くために最低限必要な情報であり、自分がどのような条件なら働けると明確にしておくと、求人探しでも迷うことが少なくなります。
加えて、研修・教育制度、専門性、昇格など将来を見据えた条件を確認することも必要です。理想の職場に就職するには、最初に希望する条件を書き起こすなど、明確化しておくことをおすすめします。
施設の規模を確認する
施設の規模も就職先を選ぶ際のポイントになります。規模によって、所属する臨床検査技師の数も大きく変わるため、どんな臨床検査技師を目指すかで勤務すべきか決まってきます。
規模の大きい施設では、100名程の臨床検査技師が所属しており、専門性に応じた業務を行っているからです。1つの専門性を高めるなら大規模な病院がおすすめですが、マルチに業務をこなせる臨床検査技師を目指すなら、規模の小さめな病院もおすすめです。
ただし、規模が小さすぎると、逆に実施する検査のバリエーションが少なくなるため、バランスを見て考えなければなりません。自分に合った職場を選ぶなら、施設の規模で考えることがポイントです。
キャリアプランを見据えた職場を選ぶ
職場を選ぶにあたっては、将来まで見据えたキャリアプランを考えて求人を探しましょう。臨床検査技師として、「管理職になりたい」「輸血業務の専門性を高めたい」「医療機器の開発に携わりたい」など、色々なビジョンがあるはずです。
明確ではなくても、将来どんな働き方をしたいかという考えを持っているなら、その考えを元にして職場も選ばなければなりません。
臨床検査技師は多くの求人があり、将来性もある職種ですから、キャリアプランを考慮した選択はその後の人生にも大きく関わります。就職後に後悔しないためにも、キャリアプランを考慮して職場選びを行ってください。
施設見学で実際に見てから判断する
職場選びは、求人票やホームページで情報収集するだけでなく、実際に施設見学に訪問することもとても重要です。写真では綺麗に見える施設でも、映していない部分は整理されていなかったり、老朽化して不便な部分があったりするからです。
職場を自分の目で観察できれば、将来自分がどんな働きをするのか、職場の人間関係や雰囲気を掴むこともできます。また、採用面でも施設見学をするかしないかで、評価が大きく変わるため、就業先の候補は可能な限り施設見学するのがおすすめです。
見学できるのは一面だけではありますが、職場選びの重要な判断材料になるため、施設見学は早めに行っておきましょう。
まとめ:臨床検査技師は今後も高い需要が期待できる
臨床検査技師は現状で多くの求人が掲載され、多くの病院で人手不足の状態になっています。激務で体調を崩さないように職場選びも必要ですが、医療機関では引く手あまたと言ってよいでしょう。
今後は医療業界でもDXやITが進むことが予想され、臨床検査技師は機器のオートメーション化で、より専門性を高めることが求められます。これから先も需要がなくなるとは考えにくいですが、自分の専門性を高めていく努力は必要です。
臨床検査技師として活躍する未来を思い描く方は、職場での働き方やキャリアプランなどを総合的に考慮して、理想とする職場への就職を目指してください。