看護師として働いていて、「もっと給料の高いところで働きたい」と考えている方も多いはずです。新人や若手のうちは仕事で知識や技術を磨くことに多くの時間を掛けますが、10年程度の看護師経験を積むと、仕事でも色々な面が見えてきます。
いわゆる中堅と呼ばれる年代からは、スキルとそれに見合う給与を求める方も多くなります。同期の看護師が別の病
院で働いており、「年収で大きな差をつけられている」と感じる方もいるでしょう。
今回は看護師が給与の高い病院で働くにはどうすればよいのか、都道府県毎の年収や給与の高い病院を探す際のポイントを解説します。現在の職場より好待遇で給与の高い職場への転職を検討中の方は、本記事の内容を参考にしてみましょう。
看護師の平均年収や地域差
看護師の平均年収や都道府県別の年収について確認しましょう。現在の給与に不満があり、引っ越しも視野に入れている方は都道府県別の年収を参考に転職を検討してみてください。
看護師の平均年収は?
全国の看護師の平均年収は、令和2年度賃金構造基本統計調査によると491万8,300円です。医療職の中では平均的な給与となっています。
看護師の給与は基本給のベースがやや低めで、夜勤手当や残業手当などで給与が高くなっています。男女別の年収で見てみると、男性看護師が505万9,000円、女性看護師が490万200円です。
男性の方が高いのは女性看護師は産休・育休の取得率が高く、夜勤や残業を減らして、長時間労働を少なくする傾向があるためです。
参考:e-Stat 政府統計の窓口 令和2年度賃金構造基本統計調査
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&query=%E7%B5%A6%E4%B8%8E%E3%80%80%E8%A8%80%E8%AA%9E%E8%81%B4%E8%A6%9A%E5%A3%AB&layout=dataset&toukei=00450091&tstat=000001011429&cycle=0&tclass1=000001152186&tclass2=000001152187&tclass3=000001152191&stat_infid=000032069431&tclass4val=0&metadata=1&data=1
都道府県別の医療職の平均年収
続いて、都道府県別の基本給及び賞与を含めた医療職の平均年収を紹介します。厚生労働省の令和2年賃金構造基本統計調査によると、各都道府県の医療職の平均年収は以下の通りです。
地域 | 平均年収 | 地域 | 平均年収 | 地域 | 平均年収 |
北海道 | 498万4,500円 | 石川 | 544万8,900円 | 岡山 | 493万3,500円 |
青森 | 534万9,600円 | 福井 | 515万5,300円 | 広島 | 503万4,300円 |
岩手 | 431万4,900円 | 山梨 | 520万2,200円 | 山口 | 490万5,600円 |
宮城 | 503万9,800円 | 長野 | 554万9,500円 | 徳島 | 490万5,600円 |
秋田 | 482万5,500円 | 岐阜 | 541万5,300円 | 香川 | 530万1,400円 |
山形 | 442万2,300円 | 静岡 | 521万1,900円 | 愛媛 | 473万2,400円 |
福島 | 423万800円 | 愛知 | 539万5,500円 | 高知 | 441万3,100円 |
茨城 | 522万3,900円 | 三重 | 491万2,900円 | 福岡 | 444万1,200円 |
栃木 | 517万4,800円 | 滋賀 | 547万600円 | 佐賀 | 468万9,700円 |
群馬 | 494万8,700円 | 京都 | 528万1,500円 | 長崎 | 480万8,400円 |
埼玉 | 540万3,600円 | 大阪 | 528万8,600円 | 熊本 | 428万1,800円 |
千葉 | 494万4,100円 | 兵庫 | 527万3,100円 | 大分 | 452万1,800円 |
東京 | 530万5,300円 | 奈良 | 514万5,400円 | 宮崎 | 445万9,300円 |
神奈川 | 555万4,200円 | 和歌山 | 517万5,800円 | 鹿児島 | 409万3,300円 |
新潟 | 483万2,900円 | 鳥取 | 481万3,600円 | 沖縄 | 454万3,400円 |
富山 | 570万2,300円 | 島根 | 510万3,400円 |
最も高いのが富山県で570万2,300円、続いて神奈川県の555万4,200円、長野県の554万9,500円と続きます。関東地方と甲信越地方は比較的平均年収が高く、関西地方から南に行くほど給与は低くなる傾向です。
あくまで平均年収ですから、もっと高い給与をもらっている看護師の方もいるでしょう。上記の表よりも年収が大幅に低い方の場合は、転職先の都道府県を検討してみてください。
ただし、平均年収が高いからと言って収入がそのまま増えるわけではなく、地域によって平均賃金や物価、地価などは大きく変わります。収入と生活のしやすさのバランスを考えることも大切です。
参考:e-Stat 政府統計の窓口 令和2年度賃金構造基本統計調査 都道府県別
看護師の給与が高い病院の特徴
看護師が働くうえで気になる給与ですが、どのような病院が給与の高い病院なのでしょうか。給与が高い病院の特徴をまとめましたので、転職する際の参考にしてみてください。
運営法人が大規模な法人や団体
給与が高い病院は、経営基盤がしっかりしていることがほとんどです。逆に経営基盤が不安定では給与だけでなく、昇給や賞与もあまり期待できません。
下記の表は日本看護協会が調査している運営主体毎の平均給与額です。データは勤続10年、31~32歳の非管理職の看護師を想定して平均月収を上から順に並べたものです。
施設 | 平均税込給与総額(手当込み) |
私立学校法人 | 36万1,386円 |
日本赤十字 | 35万1,065円 |
会社 | 34万5,654円 |
社会保険関係団体 | 34万2,376円 |
公立 | 33万5,471円 |
国立 | 33万4,322円 |
個人 | 32万7,511円 |
済生会 | 32万6,868円 |
社会福祉法人 | 32万6,544円 |
厚生連 | 32万2,943円 |
医療生協 | 32万2,506円 |
公益法人 | 32万1,422円 |
その他公的医療機関 | 31万5,895円 |
その他の法人 | 31万3,834円 |
医療法人 | 30万7,943円 |
無回答・不明 | 30万1,700円 |
計 | 31万8,916円 |
最も平均給与の高いのが私立学校法人、最も低いのが医療法人という結果になりました。毎月の給与を単純に計算すると、年収で70万円以上の差が開いています。
しかし、看護師の多くは私立学校法人や日本赤十字、会社に勤務しているわけではなく、医療法人に勤めている看護師の方が多数です。そのため、一部の看護師が高い年収を得ているものの、多くの看護師は平均的な収入であると考えられます。
転職して高年収を狙うのであれば、平均給与が高く、運営母体が大きいところを選ぶと給与アップも期待できます。
参考:日本看護協会 2020 病院看護実態調査 報告書 P49
https://www.nurse.or.jp/home/publication/pdf/research/96.pdf
病床数が多い
運営母体の大きさ、経営基盤の安定にも通じるポイントですが、病床数が多いほど給与も高くなりやすいです。病床数の多さはそのまま経営基盤の安定を反映しており、安定して昇給やボーナスが支払われると予想できます。
また、病床数の多い病院では看護師も大量に募集しており、離職防止のために対策も行っています。離職防止対策の1つが高い給与や好待遇ですから、給与の高い病院を狙うなら病床数のチェックは欠かせません。
特に病床数が500以上になると、大病院という条件の1つに当てはまります。500床以上で特定機能病院、療養型病床群を有する一般病院であれば、大病院という定義になります。
大病院は経営規模の大きさから多くの看護師が必要ですから、高い給与が期待できるはずです。
都市部に拠点が置かれている
看護師の平均給与が高い都道府県であっても、都市部と地方の病院では収入に差があります。特に人口50万人以上で政令指定都市に指定されている都市や、人口20万人以上で中核都市とされている都市では、給与の高い病院も多数です。
生活に直結する物価や家賃も高くなりますが、生活に見合う収入もあるので心配はいらないでしょう。現在地方の病院で看護師として働いており、給与に不満のある方は都市部への転職を検討してみてください。
昇給と賞与が大きい
実は昇給と賞与は必ず行わなければならないものではなく、病院の収益状況次第では賞与が支払われない、または昇給されないということもあり得ます。労働基準法上、「賃金は毎月1回以上、一定の期日を定めて支払う」という規定はあります。
しかし、昇給や賞与に関しては必ず行うべきという規定はなく、病院次第でいくらでも先延ばし可能です。
常時10人以上の労働者を雇用している場合、昇給についての就業規則を規定するという決まりはあるものの、ただし書きで「業績によって昇給しないこともできる」と規定している病院がほとんどです。
そのため、転職前に面接や口コミ等で昇給は毎年あるのか、どのくらい昇給されるのか、賞与はどのくらいかなども確認しましょう。お金の話ばかりすると印象が悪いですから、給与の話題が出てきたときにさりげなく確認するのがポイントです。
看護師の給与が高い病院の探し方
看護師が給与の高い病院を探す際、ポイントとなる部分はどこか解説します。
総合病院や専門病院で専門性の高い仕事を探す
看護師の給与はどのような病院で働くか、どのような専門性を持っているかによっても変わります。総合病院や専門病院は外来患者数、入院患者数ともに多いため、経営基盤も安定しています。
また、専門性の高い病院は高度な専門性やスキルも必要ですから、その分給与も高いです。それだけでなく、総合病院や専門病院は看護師の研修制度や教育制度も整備されており、資格を取得できれば手当も期待できます。
給与面と共に教育・研修制度の面でも総合病院や専門病院を狙うのがおすすめです。
国立の大学病院や独立行政法人で着実に昇給を目指す
国立の大学病院・独立行政法人の看護師は「準公務員」という扱いとなり、公務員に準じた待遇を受けられます。大学病院に勤めるメリットは大きく3つあります。
- 給与水準が高く、年1回昇給がある
- 休日に休みが取りやすい
- 教育制度が整備されている
この他にも経営基盤が盤石ですから、病院の経営が傾く心配がほとんどない点も強みでしょう。民間病院では昇給や賞与が必ず行われるとは限りませんが、準公務員の看護師であれば心配はありません。
安定して昇給や賞与を受け取り、高い給与水準と医療水準の職場で働くなら大学病院もおすすめです。
自己分析で自分に合う転職先を明確にする
給与の高い病院を探すことも大事ですが、もっと大事なことは長く働ける自分に合った病院を見つけることです。いくら給与が高くても自分の適性に合っておらず、強い違和感を覚えるようなら早期離職に繋がります。
ミスマッチを感じながらでは仕事へのやりがいを失い、看護師という仕事そのものが嫌になるおそれもあります。そのため、自己分析で自分の適性や性格傾向などを理解すれば、適性に合った職場を見つけやすくなるでしょう。
転職活動を始めたら、最初に自己分析を行い、分析結果を参考にして適性のありそうな病院を探してみてください。
看護師転職サイトを活用する
一般的にハローワークや求人サイトの求人票に記載されているのは、給与や基本的な福利厚生、就業時間、休日、従業員数などです。働くうえで必要な最低限の情報しか記載されておらず、会社の内部情報や口コミなどは掲載されていません。
そのため、転職活動中は自分で応募する病院の情報を調査し、自分の理想に近い職場を探すことになります。しかし、内部情報や口コミは信ぴょう性や具体性に乏しいものも多いため、自力で調べるにも限度があります。
その場合にも、看護師転職サイトに登録しておけば、企業の内部情報や評判についてもアドバイザーに確認できる点が大きなメリットです。看護師転職サイトのアドバイザーは独自のネットワークを持ち、通常では手に入らない情報を得ていることもあります。
看護師転職サイトをうまく活用し、給与が高く、働きやすい病院を見つけましょう。
給料の高い病院を選ぶときに注意すべきこと
給料の高い病院に転職するためには、注意すべきこともあります。注意点を知り、給料が高くて働きやすい職場を見つけましょう。
求人の良い情報だけで飛びつかない
求人サイトやハローワークで病院の求人を確認すると、一見すると好待遇の求人票を多く見かけます。しかし、求人票に記載されているのは雇用条件における良い部分だけであり、全てを鵜呑みにして転職すると痛い目を見ることもあります。
例えば、「月給40万円」「週休2日」という条件だとしても、色々な考え方ができることを知っておくべきです。月給40万円は各種手当が付いて満額の場合の話で、基本給自体は非常に安いことも考えられます。
また、週休2日というのも月に4・5日しか休みがなく、ある時期にまとめて休みを取らせて年間休日の帳尻を合わせているケースもあります。求人情報の良い部分は心惹かれるものですが、実際の働き方はどうなるのか細かくチェックする癖をつけることが大切です。
離職率や職員の平均年齢をチェックする
病院選びでは職員の離職率や平均年齢のチェックも重要です。離職率の高い病院は給与が高くてもブラックで、劣悪な労働環境や長時間の残業が当たり前ということも考えられます。
離職率の高い職場は残った看護師に負担が大きくなるため、人間関係も悪いケースが多々見られます。給与が高くても離職率の高い病院は避けるのが無難です。
また、職員の平均年齢も併せてチェックしておくことで、妊娠や出産での産休・育休、定年退職による人員不足などをある程度予想できます。高収入の病院でやりがいを持って働きたい方は、離職率と平均年齢も忘れずチェックしましょう。
転職先の口コミ・評判を調べる
転職先を決定するにあたっては、口コミや評判の確認も忘れてはいけません。現代ではパソコンやスマホで簡単にネットに繋がりますから、病院の名前と評判を検索すればすぐに結果は判明します。
極端に良いことが書かれた意見と極端に悪いことが書かれた意見を除けば、病院の大体のイメージは掴めるはずです。他にも看護師転職サイトで仲良くなったアドバイザーに相談し、評判を調べてもらうこともできます。
評判はあくまで意見を書く人の主観ですから鵜呑みにはできませんが、ある程度の参考にはできます。給与の高さ、働きやすさ、評判の良さの三拍子揃った職場が理想の職場と言えるでしょう。
事前に職場見学をしてから決断する
「転職したい病院が見つかった」と思っても、転職を決断する前に1度は職場見学に訪問しましょう。実際に職場の雰囲気を感じ、働いている職員の様子、病棟内の構造や整備状況、患者さんの表情などを見ることでしかわからないこともあります。
面接日に職場見学を兼ねているケースもありますが、その場では気になることが思いつかないこともあるでしょう。看護師転職サイトに登録している場合は、アドバイザーが先方に連絡し、事前に職場見学を指せてもらえることもあります。
事前に職場見学をさせてもらえれば、面接までに質問したいことを考える時間的な猶予も生まれます。自分が働くかもしれない職場ですから、不安がなくなるようにしっかりと職場見学も行ってください。
まとめ:給与の高い職場選びは、地域性や経営規模などで総合的に判断する
看護師の給与が高い病院を探すなら、都道府県の平均年収や都市部の平均、運営している組織の規模など色々な情報を勘案しなければなりません。給与が高いだけの病院は数多くありますが、長く働き続けられることも大事なポイントです。
自分にとって働きやすい条件は自己分析で把握し、自分の適性を確認しながら給与の高い病院を選びましょう。また、働く前に本当に自分に合っているか確認するためにも、職場見学を行い、転職希望先の採用担当者に気になる点は一つひとつ質問してください。
看護師の給与は長く働き続けることで上がっていくものです。給与の高さと同時に、働きやすい職場を探すことを念頭に置き、転職活動を効率的に進めてください。