看護師の転職

皮膚科で働く看護師に求められる役割は?1日の仕事ややりがいとは

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皮膚科は病院やクリニックでもよく見かける診療科です。しかし、よく見かける皮膚科について、どのような仕事をしているのかはイメージがつきにくい方も多いはずです。

皮膚科は人の皮膚全般を治療するとともに、デブリードマンや褥瘡処置なども行います。皮膚科看護師は医師の行う治療内容を把握し、患者さんへの処置、生活指導などを行うこともあります。

では、皮膚科では具体的にどのような仕事をしているのでしょうか。本記事では皮膚科の特徴や看護師の役割、求められる能力などを紹介します。

また、やりがいや大変と感じるところも解説しますから、転職先に悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください。

皮膚科とはどのような診療科か

皮膚科がどのような診療科なのか、病院における皮膚科の特徴を詳しく紹介していきます。美容皮膚科との違いについても解説しますから、各科の違いについても確認しましょう。

皮膚科病棟は複合病棟が多い

皮膚科の病棟は皮膚科単科ということは珍しく、病院では他科との混合病棟が多いです。混合病棟では、糖尿病の皮膚ケア、陰部のケアなどとの兼ね合いから、内科・泌尿器科との混合が多い傾向があります。

また、そもそも皮膚科で入院するケースは非常に少なく、病院によっては皮膚科病棟を設けていないところもあります。皮膚科は外来やクリニックでの診療がほとんどですから、看護師の仕事も外来系の業務が多いです。

アレルギーから悪性腫瘍まで症例は様々

皮膚科は美容皮膚科と区別して考える必要はありますが、一般の皮膚科では幅広い疾患を取り扱っています。下記は疾患の一部ですが、皮膚科で治療を行う主なものです。

  • 湿疹・あせも
  • 悪性腫瘍・良性腫瘍
  • 感染症(疥癬・蜂窩織炎・ブドウ球菌など)
  • アトピー性皮膚炎
  • アナフィラキシー症状
  • 中毒症(虫やかさごなど)
  • 水疱症(帯状疱疹等)
  • 血管炎
  • 膠原病
  • 熱傷・凍傷

細かく分類すれば他にも多くの疾患があり、皮膚に関わる症状は基本的に皮膚科の診療領域になります。意外に思われるのがアナフィラキシー症状や中毒症でしょう。

蜂刺されを繰り返すとアナフィラキシーショックを起こすリスクが高まりますが、ショック症状を緩和するエピペン(R)は皮膚科からの処方です。看護師はアナフィラキシー反応を起こす可能性が高い患者さんに対しては、エピペン(R)の打ち方指導も行います。

また、虫刺されや海洋生物(クラゲやかさご)に刺された際も、皮膚科で対処します。皮膚科は患者さんの日常生活に近いところにある診療科であり、皮膚科看護師は患者さんとも近い存在です。

皮膚科と美容皮膚科との違い

皮膚科には一般皮膚科と美容皮膚科があります。美容皮膚科との違いをまとめると、次の3つになります。

  • 美容向けの施術ではなく、疾患の治療を目的にしている
  • 美容皮膚科は自由診療、一般皮膚科は保険適用がある
  • 美容皮膚科に来る人はお客様、一般皮膚科は患者

そもそも一般皮膚科は皮膚に生じる不快な症状を治療する目的であり、肌を美しく整える目的の美容皮膚科とは根本的に立ち位置が違います。その証拠として、一般皮膚科は治療として保険適用されますが、美容皮膚科は自由診療で全額自己負担です。

また、細かいところですが訪れる方の呼び方も一般皮膚科は「患者」、美容皮膚科は「お客様」です。当然ながらそれぞれの看護師に求められる役割も異なります。

一般皮膚科では看護師は医師の補助と治療のサポート、美容皮膚科はお客様への接客とカウンセリングが役割です。転職を考える場合は、それぞれの違いを認識したうえで職場を選びましょう。

皮膚科看護師の働き方

皮膚科看護師の働き方について、具体的に見ていきましょう。給与や求人の状況、仕事で注意すべき点にも触れていきます。

看護師の役割は皮膚状態に合わせたケアの実施

皮膚科には様々な皮膚の悩みで患者さんが受診されており、症状に応じた治療を行っています。医師は患者さんの皮膚を確認して、処方や皮膚への処置を行います。

看護師は医師の診察を介助するとともに、処置の介助、処置後のケア、生活指導などを行うのが役割の1つです。特に皮膚に対しては内服薬と塗布薬を使用するケースが多く、患者さんへの指導が治療においては重要な位置づけです。

傷口をどのくらいの頻度で洗浄すべきか、洗浄後はどの薬剤を塗布するのか、塗布するときの注意点は何かなどを説明用紙も渡しながら説明します。皮膚科では強力なステロイド剤を使用する機会も多く、長期使用で皮膚には様々な副作用が起こります。

患者さんへの教育が皮膚科看護師にとっては重要な役割と言えるでしょう。

皮膚科看護師の給与や求人数はやや少なめ

令和2年の統計によると、看護師の平均給与は33万4,400円となっています。皮膚科看護師の場合を考慮すると、皮膚科看護師の主な職場は外来やクリニックです。

外来系の仕事は残業が少なめで夜勤がないことから、給与は基本給とほぼ変わりません。その分、求人は一定の給与を設定していることも多く、平均から著しく低くはないものの、残業や夜勤のある職場には届かない程度です。

また、外来系やクリニックの特性として、病棟に比べて人員が少なくても稼働できる点があります。そのため、人材の出入りが激しい職場でない限りは、多くの人材を必要としない特徴があります。

外来やクリニックは求人数で見ると少なめですから、狙うなら病院の皮膚科混合病棟になるでしょう。

参考:e-Stat 政府統計の窓口 賃金構造基本統計調査 (令和2年と同じ推計方法による集計)職種別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450091&tstat=000001011429&cycle=7&year=20190&month=0&tclass1=000001155791&tclass2=000001156749&tclass3=000001156752&result_back=1&cycle_facet=tclass1%3Atclass2&tclass4val=0

感染力の強い皮膚疾患には注意が必要

皮膚科には「アレルギーから悪性腫瘍まで症例は様々」で紹介したとおり、多くの皮膚疾患患者さんが訪れます。その中でも特に注意すべきなのは感染症で、取り扱いを間違えると院内感染を起こす危険性があります。

皮膚科の感染症で厄介とされるのが「ノルウェー型疥癬」です。いくつかある疥癬の中でも特に感染力が強く、1人の患者さんから爆発的に感染拡大する要注意疾患です。

病棟で発生すると数日で数十人に広がるケースもあり、皮膚科看護師にとっては感染を防止しつつ、治療を行う必要もあります。皮膚科看護師自身が感染源になってもいけないですから、皮膚科で要注意の感染症については事前に確認しておきましょう。

皮膚科看護師の1日の仕事

皮膚科看護師の一日の仕事について、外来・クリニックと病棟の1日の流れから見ていきましょう。

皮膚科外来・クリニックの1日の流れ・業務内容

皮膚科外来・クリニックの1日の流れは次のように進みます。

8:30出勤・外来準備
9:00ミーティング・患者受付開始
9:30午前診療開始・診察介助・問診
11:00皮膚の処置
12:30昼休憩
13:30午後診療開始・診察介助
15:00皮膚の処置・生活指導
16:30診察終了・後片付け・記録
17:30退勤

皮膚科外来・クリニックでは、看護師の仕事は主に医師の診察介助です。必要な看護技術は基本的な手技だけで問題なく、ブランクのある方でも働きやすいでしょう。

高度な看護技術を必要としない分、患者さんとのコミュニケーション、指導技術は必要です。皮膚科の処置では軟膏の塗布や創傷処置もあるため、患者さんのセルフケアが大事になります。

看護師はセルフケアの意識が高まるように働きかけを行い、患者さんの病識を高めることも仕事です。特別な技術は必要としないからこそ、指導能力とコミュニケーション力は求められるでしょう。

入院病棟の業務内容

入院病棟では皮膚科単科のケースは珍しく、ほとんどが他科との混合病棟です。そのため、入院病棟では皮膚を専門的に診るというよりも、他の疾患で入院している方を診療するパターンの方が多いです。

例えば、入院中の患者さんに大きな創傷があり、壊死部分をデブリードマン(切除)するケースや褥瘡の対処などが挙げられます。皮膚科看護師は医師の行う処置を介助したり、褥瘡の処置をしたりするのが病棟での仕事です。

仕事内容としては外来・クリニックの方がメインとなるため、病棟で皮膚科の仕事をする機会は少ないでしょう。

皮膚科看護師に求められる能力・資格

皮膚科看護師になるにあたって、どのような能力・資格を求められるのかも確認しましょう。

適切な指導を行う能力

皮膚科看護師は注射や創部の処置など基本的な看護技術さえあれば、ブランクがあっても働きやすいです。一方で、看護師は生活指導やセルフケア、エピペン(R)の使用方法など、患者さんに対して多くの指導を行う機会があります。

そのため、皮膚科看護師には基本の看護技術に加えて、適切に必要な指導を行う能力が求められます。患者さんに指導を行うには一定の経験と知識も必要ですから、看護師として内科や一般の診療科での経験も求められるでしょう。

症状と皮膚の状態から推測する観察力

皮膚科では患者さんに問診をするのも看護師の役割です。その際、患者さんから症状を聴取するとともに、皮膚にどのような症状があるのか直接目にすることもあります。

痒みやかぶれといった大まかな症状があっても、農作業か、虫刺されか、細菌性かなど色々な原因があります。皮膚の症状を見ることである程度原因は推測できるため、看護師も原因と皮膚症状から推測する観察力が必要です。

問診は医師の診察に繋がる大事な情報を聴取する場であり、看護師が必要な情報を引き出すことで診察もスムーズになります。症状と皮膚の状態との関連性を推測するには、多くの症例と勉強も必要です。

日頃から患者さんをよく観察し、わずかな変化も見逃さない観察力を身につけましょう。

皮膚・排泄ケア認定看護師

皮膚科看護師として活躍したいなら、日本看護協会が認定する褥瘡や排泄管理のスペシャリスト資格です。数多くの認定看護師資格の中でも実用性が高く、特に人気の高い資格の1つです。

褥瘡ケアや排泄管理、ストーマケア、皮膚が脆弱な患者さんへのスキンケアなどに高い専門性を持つことを証明できます。クリニックではあまり必要とされませんが、病院の皮膚科で働く場合に有利になります。

また、皮膚排泄ケア認定看護師は訪問看護分野にも精通しているため、病院以外に訪問看護事業所でも活躍できるでしょう。

参考:公益社団法人 日本看護協会 認定看護師

https://nintei.nurse.or.jp/nursing/qualification/cn

H2:皮膚科看護師のやりがいとなるポイント

皮膚科看護師のやりがいに繋がるポイントを紹介します。転職を検討中の方は、次のポイントを職場選びの参考にしてください。

夜勤なしで働きやすい

皮膚科看護師の働く場所は外来・クリニックが多く、患者さんも通院の方がメインですから夜勤はほとんどありません。病棟勤務であれば別ですが、通院治療では残業も少なく、夜勤もない安定した生活を送れるでしょう。

夜勤で体調を崩す心配がある方、仕事と家庭を両立させたい方、なるべく残業はしたくない方にはおすすめの職場です。体力的な負担も少ないため、モチベーションを維持して働きやすいはずです。

基本的な看護技術があれば働ける

皮膚科で特別なスキルや難しい看護技術は求められないため、ブランク期間があって技術面に心配がある看護師でも働きやすいです。注射や創傷処置の技術は必要ですが、他科に比べると必要な技術の幅が少なく、復帰先としても最適な職場です。

看護師として復帰するためのステップにしたい方、看護技術に自信がない方、1つの診療科を極めたい方にとってはやりがいに繋げやすいでしょう。

重症・急性の患者さんが少ない

皮膚科の患者さんは命に関わる疾患が少なく、重症・急性の患者さんはほとんどいません。落ち着いた状態で業務を進められるため、急変対応のような命に関わる現場を苦手とする方にもおすすめです。

皮膚科では重度の熱傷や悪性腫瘍を診察することはありますが、その場合も他科と連携して治療することが基本です。患者さんの急変や心肺停止など緊急事態に遭遇することは少なく、精神的な負担も少ない状況で働けます。

落ち着いた環境で患者さんと接したい方には、やりがいを感じられる職場になるでしょう。

資格を取得してキャリアアップに繋げられる

皮膚科で働くことで、臨床経験と皮膚科での実務経験に繋がり、皮膚排泄ケア認定看護師資格取得も目指せます。また、皮膚に関する知識が身に付くと、病棟での褥瘡ケアや皮膚トラブルにも対応できるようになります。

皮膚科は教科書的な知識も重要ですが、経験に基づく知識も欠かせないものです。皮膚科を経験して他科で働く看護師は貴重ですから、転職ではプラスに評価されるでしょう。

資格も取得していればキャリアアップもしやすくなり、看護師として長く働きたい方にはやりがいとなるはずです。

皮膚科看護師の大変なところ

皮膚科看護師の大変なところについても確認しましょう。

看護技術が上達しにくい

皮膚科では看護技術を経験する機会が少なく、看護技術が上達しにくい点があります。ある程度経験を積んだ看護師であれば影響は少ないですが、新人看護師の場合は看護技術を経験できない影響が如実にあらわれます。

看護技術を磨きたい看護師にとっては、上達しにくい環境はストレスに感じるでしょう。また、経験豊富な看護師でも、簡単な処置や技術ばかりが多いことで、物足りなさを感じることがあります。

看護技術の上達を目指したい方には、皮膚科は不向きな職場と言えるでしょう。

使用する薬剤を覚えなければならない

皮膚科では多くの薬剤を使用しますが、中でもストロイドは頻繁に利用されます。ステロイドは長期使用に注意すべきこと、傷口に使用してはならないことなど多くの注意点があります。

また、ステロイドの塗布薬は作用の強さで5段階にランク分けされており、どの薬剤がどのランクにあるのかを理解しておかなければなりません。

  • Strongest(最も強い)
  • Very strong(とても強い)
  • Strong(強い)
  • Medium(普通)
  • Weak(弱い)

上記の5段階に分けられており、それぞれに対応する一般名と製品名があります。それぞれがどのようなときに使用されるのか、使用してはいけないシーンなどを理解し、患者さんへの指導に活かすことが大事です。

ランク毎の一般名と製品名を覚えるのが大変で、皮膚科ならではの苦労するポイントです。

参考:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021 日本皮膚科学会雑誌代131巻第13号 P27

https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/ADGL2021.pdf

患者さんから皮膚疾患に感染する可能性がある

皮膚科で働いていると常に気を遣うのが、患者さんの皮膚疾患に感染するリスクです。感染力の強い代表的疾患には疥癬やダニ、白癬(水虫)があります。

感染症にかかってしまうと、強い掻痒感と痛み、発熱といった症状があり、家族に感染してしまうリスクがあります。子育て中の方は子どもに感染する危険性もあるため、常に警戒しなければなりません。

感染症の患者さんが毎日通院するわけではありませんが、受診する際は注意が必要になります。皮膚科看護師にとって感染症への対策は意識すべきもので、精神的なストレスにもなっています。

残業手当や夜勤手当が少ない

皮膚科看護師の多くは外来やクリニックで働くため、残業が少なく、夜勤もほとんどありません。そのため、手当による収入アップを見込んで転職する場合には、期待外れに終わる可能性が高いです。

ただし、皮膚科には季節的にアレルギーや白癬が増える時期や熱傷で急患が入るケースもあります。その場合には残業時間が増えて、手当も増える可能性があります。

安定して手当を求めるなら過信しない方がよく、生活に支障が出ない範囲の収入を意識して職場を選んでください。

まとめ:皮膚科は難しい技術が不要で、ブランクがあっても働きやすい

皮膚科看護師は夜勤がほぼなく、難しい技術も不要で、ブランクから復帰した方でも働きやすい診療科です。子育て中で夜勤ありの勤務は厳しい方、ワークライフバランスを意識したい方におすすめの職場と言えるでしょう。

反面で、スキルを磨きにくく、バリバリ働きたい看護師にはあまり向いていません。転職を考える際は、自分が皮膚科でどのように働きたいかをイメージしてから決定してください。

急患や命に関わる症例は少ないですから、患者さんと腰を据えて関係づくりをしたいなら、皮膚科を転職先に選ぶのもよいでしょう。看護師として何を重視していきたいのか、転職の軸を明確にして皮膚科への転職を実現させてください。

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