「臨床検査技師は転職しにくい」「求人が少ない」という話を聞き、不安になる臨床検査技師の方も多いはずです。医師や看護師に比べると臨床検査技師は需要が少なく、いつでも転職できると限らないのは確かです。
しかし、転職が難しいかというと、必ずしもそうとは言い切れません。求人のタイミングもありますが、計画性を持って行動すれば転職も十分可能です。
今回は臨床検査技師の転職は本当に難しいのか、転職のタイミングや転職前にやるべきことを紹介します。現在、臨床検査技師として働きながら、転職活動を始める方はぜひ本記事を参考にしてみてください。
臨床検査技師が転職を考える理由
臨床検査技師が転職を考える理由として、代表的なものを見ていきましょう。
色々な職場を経験したい
若手の臨床検査技師で転職経験のない方に多い理由として、代表的なのが「色々な職場を経験したい」という強い思いです。自分の力を試したい、今より成長したいという気持ちが根底にあり、仕事にある程度慣れると別の職場を経験したいという気持ちが強くなるようです。
特に臨床検査技師の仕事は、病院や部署によって仕事がある程度決まってきます。そのため、仕事に慣れてくると成長する機会を求めて、若手の臨床検査技師は転職を考えるようになります。
若手ほど成長の機会を得るために転職を考える傾向があるようです。
仕事がルーチンワークに感じる
臨床検査技師の仕事は検体の検査、採血、エコーや心電図などが代表的です。しかし、1人の臨床検査技師がすべての検査を行うわけではなく、それぞれに部署や仕事を分担して業務を行っています。
また、1つの部署や担当になると、一定期間は同じ仕事を担当し続けることになります。そのため、仕事に慣れてくると業務がルーチンワーク化しやすく、やりがいを感じにくくなることが転職理由の1つです。
仕事がルーチンワーク化してやりがいを感じにくくなると、仕事をすることが精神的苦痛になります。仕事へのやりがいのなさは代表的な転職理由の1つとなっています。
給与の良い職場に転職したい
臨床検査技師の給与は医療専門職の中でもやや低く、令和2年度の賃金構造基本統計調査によると平均年収は492万7300円です。看護師の給与水準とほぼ同等ではありますが、平均勤続年数、所定内実労働時間数、超過実労働時間数はいずれも看護師を上回っています。
つまり、臨床検査技師は勤続年数と労働時間の長さで給与が上がっており、ベースとなる基本給は低いということになります。
医療職の平均年収は、以下の通りです。
職種 | 平均年収 | 所定内実労働時間数 |
医師 | 1,440万3,200円 | 165時間 |
歯科医師 | 787万5,100円 | 168時間 |
薬剤師 | 565万1,300円 | 162時間 |
看護師 | 491万8,300円 | 159時間 |
診療放射線技師 | 548万7,100円 | 163時間 |
臨床検査技師 | 492万7,300円 | 165時間 |
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・視能訓練士 | 418万9,400円 | 163時間 |
歯科衛生士 | 356万1,100円 | 169時間 |
歯科技工士 | 390万1,600円 | 168時間 |
栄養士 | 373万6,700円 | 166時間 |
その他の保健医療従事者 | 426万3,900円 | 163時間 |
労働時間に対して給与水準がやや低めなことから、転職を検討する臨床検査技師の方も多いです。
出典元:e-Stat 令和2年度 賃金構造基本統計調査
閉鎖空間で人間関係が悪い
臨床検査技師特有の悩みとも言えるのが、仕事が部署内でほとんど完結できる点です。検査をしているとほぼ同じ場所が定位置となるため、交流のある顔ぶれも毎日変化がありません。
仲の良い職員であれば問題になりにくいのですが、中には犬猿の仲という職員もいるでしょう。職務上、人間関係の良し悪しに関係なく関わることになるため、精神的なストレスは大きいものです。
閉鎖空間での人間関係に耐えきれなくなり、転職を考えるのも臨床検査技師には時々あります。
臨床検査技師の転職は本当に難しいのか?
臨床検査技師が転職を考える理由については多くの方が理解できたはずです。では、臨床検査技師は本当に転職が難しいのでしょうか。
臨床検査技師の転職事情について詳しく解説します。
病院は欠員がないと求人が出にくい
臨床検査技師が働く代表的な職場といえば病院です。特に総合病院であれば検査室だけでなく、採血室や生理検査室などで働く臨床検査技師もおり、臨床検査技師が多く働いています。
ただし、病院の難点として臨床検査技師は欠員が出にくく、常に優良な求人が出ているとは限りません。臨床検査技師の仕事は大規模な病院では夜勤もありますが、一般的な病院では夜勤がないことも多いです。
病院勤務の臨床検査技師は多忙ではありますが、安定した社会的地位と給与がもらえるため、退職する人は少ないです。そのため、「病院」の求人を必死に探すよりも、病院以外も含めて探す方法がよいでしょう。
病院以外の転職先を選ぶ方法もある
臨床検査技師の病院への転職は少なめですから、病院以外の転職先を含めることで効率的な転職活動を進められます。臨床検査技師が必要とされる場所としては、検査センター、検診センター、レディースクリニック、医療機器メーカー、製薬会社などです。
多くの方が仕事内容を想像しやすいのは健診センターや検査センターでしょう。レディースクリニックは近年の不妊治療需要の高まりを受けて、胚培養士の求人が多くなっています。
また、医療機器メーカーや製薬会社ではエコーの経験や臨床での経験を活かし、新しい医療機器や新薬開発に携わることもできます。病院以外にも選択肢を広げることで、これまでにない未来が見えてくるはずです。
コロナウイルスの流行から検査センターの求人は増加
2020年から感染が広がったコロナウイルスの影響により、検査センターでのPCR検査や抗体検査の需要は増加しています。需要増加に伴い業務負担が大きくなり、従来の職員数では対応できないところも出てきています。
感染が落ち着けば需要も収まる可能性は高いですが、現状は「急募」で臨床検査技師を募集している検査センターも多いです。感染終息後まで継続して働けるかどうかは努力次第ではありますが、給与面で高い求人も多く、転職先としては有望です。
臨床検査技師として特殊なスキルを持っている必要もありませんから、転職先の候補として考えてみてはいかがでしょうか。
転職前に臨床検査技師としてやるべきこと
転職活動を本格的に始めてからやるよりも、事前にやっておくべきポイントを紹介します。「これからどこで働こうか迷っている」「転職したいけど職場を選べない」という悩みのある方は、紹介するポイントを参考にしてみましょう。
転職の目的を明確にする
転職活動で最も大事なことは、「転職の目的をはっきりさせる」ことです。転職を決めた理由や後悔は人それぞれあるはずです。
では、転職先でどうしたいのかを考え、転職活動における軸を自分の中で決めておきましょう。転職活動の軸は自分が望むものなら何でも構いません。
- 給与が高い職場
- 通勤しやすい立地
- 残業の少ない職場
- スキルアップができる部門
- コミュニケーション能力を活かせる働き方
上記のほかにも臨床検査技師として経験してきた中で、それぞれの仕事観があるでしょう。そうした経験を元にして何を転職の目的にするか決定し、目的に合った求人を探すことが大切です。
目的を定めていないとせっかく転職しても早期離職のリスクが高く、転職を繰り返すおそれもあります。転職活動を始める前の大前提として、転職の目的を明確にしてください。
自分の得意と不得意を把握する
臨床検査技師の仕事は検体検査のほかにも、採血や心電図、エコー検査などがあります。また、検体検査にも血液検査だけでなく、細胞診や培養など細かく業務内容が分かれています。
臨床検査技師として転職するのであれば、自分が経験してきた業務から得意と不得意を分類しましょう。得意分野を活かして転職するなら、得意分野をもっと伸ばせる職場に応募するのがおすすめです。
逆に不得意な分野をなくしたいと考えるのであれば、不得意な分野を業務の中心にして働ける場所を選ぶこともできます。転職先を絞るためにも自分の得意と不得意を把握し、どのような条件で働きたいのかを考えておくことをおすすめします。
スキルを活かした転職先を選択肢に入れる
臨床検査技師として正統派の転職なら病院や検査センターが代表的ですが、少し特殊な転職先もあります。具体的には医療機器メーカーや製薬会社があります。
医療機器メーカーは新しいエコーや心電図を開発するため、臨床検査技師のスキルを発揮できる環境です。腹部や頸部、心エコーの画像読影スキルがあれば、アプリケーションスペシャリストとして働く道があります。
アプリケーションスペシャリストの仕事は医療機器の説明や講習会でのプレゼン、新製品開発の企画などです。臨床経験を基に最先端の医療機器開発に携わることができ、最新の医療知識もインプットできることからおすすめの職場です。
また、製薬会社では臨床開発モニター(CRA)という選択肢もあります。CRAは新薬の治験に関わる仕事で、社会人としての経験やコミュニケーション能力を必要とする仕事です。
海外に本社のある製薬会社の場合、英語で話す必要性もあることから、TOEICなどで一定の英語力を身に付けていると採用されやすいでしょう。CRAは病院や検査センターに比べると患者さんと直接関わる仕事であるため、治療に貢献しているという実感にも繋がります。
どちらの仕事も医療専門職としての経験を活かせますから、選択肢に加えておくとキャリアの幅が広がるでしょう。
臨床検査技師の転職サイトに登録する
臨床検査技師の求人がすぐに見つからない場合も考えて、臨床検査技師の転職サイトに登録しておくことも大事です。臨床検査技師の求人はタイミングが重要で、いくら求人を探しても優良な転職先が見つからないことがあります。
その点を臨床検査技師の転職サイトでカバーし、新規の求人が出たらアドバイザーから連絡をもらいましょう。アドバイザーも実際に転職へと繋がれば業績に直結するため、事前に条件を指定すれば優先的に連絡をくれます。
臨床検査技師の転職サイトは、一般的な転職サイトよりも細かな求人まで網羅しており、痒い所に手が届く存在です。転職を検討中の臨床検査技師の方は、1つ以上の転職サイトに登録しておくとよいでしょう。
転職におすすめのタイミングと求められる人材
臨床検査技師が転職するときに、おすすめのタイミングと必要とされる人材について解説します。現在転職を検討中の方は、自分にどれだけ当てはまっているか考えながら読んでみてください。
転職するなら若いほど有利
まず臨床検査技師が転職するなら20代・30代のうちがベストです。ただし、臨床検査技師は医療専門職ですから、転職自体は40代以上でもできます。
ですが、20代と40代では将来性や期待値に大きな違いがあり、求人で採用されやすいのは将来性のある20代です。若いうちに転職すれば教育すればすぐに即戦力となり、長く働いてくれるからです。
逆に40代以上になると前職のやり方に固執し、転職先でも環境に適応できない場合があります。結果として早期離職のリスクが高いため、40代以上の方を採用するのは企業にとってもリスクが高いと考えられます。
転職を検討中の20代・30代の臨床検査技師の方は、キャリアアップと仕事に対する視野を広げる意味でも、早めに転職を決断することが大事です。
40代以上での転職は専門資格を取っておくこと
40代以上でも臨床検査技師なら転職可能ですが、その場合は何らかの専門資格を取得しておいた方がよいでしょう。臨床検査技師は欠員の出にくい職種ですから、他の候補者との優劣を競い合って勝たなければなりません。
年齢という不安要素がある場合は、専門性の高さをアピールすることがポイントです。具体的には、下記のような資格を取得して転職市場における付加価値をつけましょう。
- 超音波検査士
- 心臓リハビリテーション指導士
- 第一種・第二種消化器内視鏡技師
- 認定サイトメトリー技術者
- CRC認定資格
- 日本糖尿病療養指導士
上記はいずれも臨床検査技師としての臨床経験を活かせるうえ、職場によっては手当も支給されるおすすめの資格です。40代の臨床検査技師は数多くいますが、専門資格を持つ臨床検査技師はそれほど多くいません。
自分と他者を差別化するためにも、資格取得を目指してみてください。
企業への転職はマーケティングスキルやマネジメントスキルを身に付ける
医療機器メーカーや製薬会社などの一般企業で働く場合には、マーケティングとマネジメントスキルがあると好条件での転職が目指せます。現代においてはどの企業もマーケティング戦略を重視しており、売れる商品にマーケティングは必須です。
また、マネジメントも業務の効率化やエンゲージメントの高まりに必要なスキルです。病院で管理職の経験があれば、その点をアピールするとよいでしょう。
マネジメントが得意な人材は貴重な存在ですから、マネジメントの実績をアピールすることが転職を進めるうえでのポイントです。
仕事への熱意のある人は採用されやすい
転職するうえで基本的なことですが、仕事への熱意は採用担当者が注目するポイントです。「給料や待遇が良いから」というよりも、「自分のスキルで治療に貢献したい」と考える人を採用するのは自然なことです。
転職活動をする際も履歴書に仕事への意欲を記載し、面接でも熱意をアピールしましょう。過剰にアピールするとわざとらしさが出てしまいますが、「仕事に対してどのように取り組みたいのか」、この点を明確にしておくだけでも大きな違いがあります。
転職先から求められる人材になるためにも、仕事への熱意はすぐに言語化できるように準備しておいてください。
チームワークを意識できる人は重宝される
どのような職場でも共通していることですが、特に医療ではチームワークが重要です。臨床検査技師は閉鎖的な空間で働く機会も多いですから、チームワークがなければ業務が上手く進みません。
マネジメント能力を買われて採用される場合も必要なスキルですから、チームワークを意識して仕事をできる人材を目指しましょう。
まとめ:臨床検査技師の転職は働き方を明確にしてから!
臨床検査技師の転職は難しいと言われますが、まずは働き方を明確にイメージしてから活動を始めることです。病院の求人は少ない傾向ですが、病院以外にも臨床検査技師を必要としているところはあります。
「病院で働き続けたい」というこだわりがない限りは、選択肢を広げておけば転職先は見つかります。まずは転職の目的、得意・不得意の把握から始め、自分の中で優先したい条件を決定しましょう。
ある程度経験年数を積んだ方の場合は、専門資格を取得してから転職を目指してください。それぞれの目的や年齢、適性に合わせて転職先を探せば、臨床検査技師の転職も難しくはありません。