【作:くららさん】
コロナ禍のニューノーマルとして各企業ではリモートワークの導入が定着しています。
働き方や職場環境の変化、在宅勤務が増える中で注目されるようになったハラスメントが、リモート・テレワーク中のハラスメント『リモートハラスメント』、略して『リモハラ』です。
働き方の選択肢が増えることは感染拡大の防止だけでなく、人材活用や時間の有効活用などのメリットがあります。
しかし、リモハラによって安心できる空間にいながらハラスメントによって嫌な思いをする、パソコンに向かうのが怖くなるといったデメリットも。
今回は、リモハラが起きる要因や事例、対策等について紹介します。
コロナ禍が収束してもリモートワークやテレワークが継続される企業も多いため、リモハラに悩んでいる方はぜひ参考にしてください。
コロナ禍で注目!リモハラってなに?
リモハラとは、リモート・テレワーク中におけるハラスメントのことをいい、『リモートハラスメント』『リモハラ』といわれ、コロナ禍をきっかけに生まれた新しいハラスメントです。
パワハラやセクハラといったハラスメントと同様に、加害者側の何気ない行動や一言によって受け取る側が不快感や嫌悪感を抱きます。
なぜリモハラが起きるの?
新型コロナウイルス感染拡大防止策として企業で導入された在宅勤務、リモートワーク。
これまで会社で仕事をしていたときは、パワハラやセクハラについて周囲の目がありましたが、職場が自宅というプライベート空間に変わりました。
そこで、リモートならではの人との距離感やコミュニケーションに対しての意識が薄れ、職場ではしなかったハラスメント行為を行ってしまうケースが増えているのです。
リモハラが起きる要因として5つあげられます。
仕事とプライベートの線引きが難しい
職場では周囲の目がありハラスメント行為について気を付けている方でも、プライベート空間になると無意識のうちにハラスメントをしてしまいます。
リモートワークでは普段知らない相手のプライベートをみたり、チャットで連絡をすることで距離が近くなったと思い込んでしまいがちです。
お互いが会社ではない場所、リラックスできる生活環境で仕事をしているために会社での関係性が曖昧になってしまうのです。
慣れない仕事環境
コロナ禍をきっかけに通勤から在宅勤務にシフトしたことで、上司・部下ともに慣れない仕事環境に戸惑ったはずです。
インターネットやテレワーク環境を整えたり、部屋を片付けたり…また、上司にとっても見えない部下の姿をどうやってマネジメントすればいいのか頭を悩ませたことでしょう。
仕事をしている様子が分からないために「さぼっていないか」「ちゃんと連絡して管理しないと」「悩んでいることはないか」と、進捗状況を気にして過剰に管理したり頻繁な報告を求めてしまったりといったケースがあります。
リモート環境に慣れなくてはいけないと思い取り組んでいる上司の行動が、知らず知らずのうちに部下にストレスやプレッシャーを与えリモハラと受け取られてしまいます。
リモート特有のコミュニケーション
職場では普通にコミュニケーションをとっていたのにオンラインになると、途端に距離感が掴めなくなってしまうのはリモートワークの特徴です。
相手の表情や声、雰囲気から感情を読み取ることができていましたが、オンラインでは声のトーンやメールやチャットでの文字からのコミュニケーションが主流となります。
オフィスにいるときよりも相手の気持ちや状況が分かりにくくなってしまいます。
特に文字だけのコミュニケーションでは、伝えたいことやニュアンスがうまく伝えられないというジレンマに陥ることもあります。
リモートワークのルールが未整備
コロナ禍でリモートワークを導入した企業では、そもそも在宅勤務における就業規則や勤務体制が整備されていないケースが少なくありません。
業務の管理体制や勤怠管理などのルールが明確になっておらず、手探り状態で進めていたことからリモハラが発生するきっかけになります。
コロナ禍のストレス
新型コロナウイルスの感染拡大から多くの人はストレスを抱えて生活しています。
もちろんコロナウイルス感染の恐怖や不安、外出自粛、マスク生活…などこれまでの生活から一変して自由を奪われ、ストレスが溜まりやすい状況です。
我慢し続け、慣れないリモートワークに取り組んでいる環境からストレスを感じ、ついきつい口調になってしまうケースもみられます。
どんなことがリモハラになるの?リモハラ事例紹介
では、どのような行為がリモハラに該当するのでしょうか。
事例を4つみていきましょう。
プライバシー侵害
リモートワークではWEBカメラを使ってオンラインミーティングをするときがありますね。
そこでWEBカメラで部屋を映している際に起こるリモハラが、プライバシーの侵害です。
- 「〇〇さんの部屋ってかわいいね」
- 「部屋に〇〇を飾ってるんだね」
- 「後ろの本棚にあるけど、〇〇が好きなんだね」
等、オンラインミーティング中に部屋の中を観察される。
- 「男の人の声が聞こえたけど誰かいるの?一人暮らしだったよね」
- 「子供の声がするけど、今は仕事中なんだよ」
- 「会議中にペットを部屋にいれるな」
と、カメラ腰に部屋の中や生活環境について詮索されます。
仕事中といっても自宅を使って行うリモートワークでは、仕事部屋が確保できない場合はリビングで仕事をされている方も多いでしょう。
周囲の生活環境の音や在宅している子供の声が入ってしまうのは仕方がないことです。
それについて詮索したり追い詰めたりするのは、まぎれもなくリモハラに該当します。
セクハラ
日頃から不快に感じていたセクハラ的発言や行動に悩む女性は少なくありません。
まさかリモートワーク中に行われると思っていなかった方も多いですが、面と向かっていない場合でもセクハラ行為に該当するリモハラが横行しています。
- 「もしかしてノーメイクなの?女性なんだからちゃんと綺麗にした方がいいよ」
- 「上はスーツなんだね、下は何はいているの?ちょっと立ってみてよ」
- 「マスクを外した顔って久しぶりにみるけど、可愛いね」
- 「家にいるからちょっと太ったんじゃないの?」
など、テレワーク中の服装やメイクについて話題にされることは不快感以外の何物でもありません。
また1対1でのオンライン飲み会に誘われたり、業務に関係ないチャットが頻繁にきたりといった個人的な関係をもとめるリモハラ事例です。
「離れているからセクハラはされない」ことはないのです。
セクハラ発言をした相手にとっては「場を和ませたかった」「冗談だった」と軽い気持ちだったかもしれませんが、自宅にいながらセクハラを受けることは仕事を続けにくい心情に陥ってしまいますね。
パワハラ
厚生労働省が定義するパワハラとは、
- 職場において行われる優越的な関係を背景とした言動
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
- 労働者の就業環境が害されるもの
これら3つの要素を全て満たすものをいいます。
職場において行われるハラスメントということで、自宅で仕事をしているケースは該当しないのではないかと思っている方もいますが、リモートワークも立派な職場です。
- 「もう仕事終わった?まだやってるの?」と進捗状況を頻繁に確認。
- 「チャットしたのに返事遅いよね、さぼってるんじゃないの」
- 「夜に連絡するね、どうせ家にいるからパソコン使えるでしょ」
定時が過ぎオフラインにしていたら「なんでオンラインにしていないんだ」と怒られる
と、会社から自宅に職場が移行したことで業務時間が曖昧になったり、業務の進捗状況を監視してきたりといった行為はパワハラに該当します。
リモートワークであっても既定の労働時間は守られるべきであり、時間外の電話やチャットは業務のひとつです。
緊急性がないにも関わらず労働時間を超えて、または休日に業務を強制することもパワハラとなるでしょう。
その他
リモハラはセクハラやパワハラ以外にも、様々なハラスメント要素を含んでいます。
例えばオンライン飲み会。
・業務時間以降、オンライン飲み会を提案され参加しないと伝えると「付き合いが悪い」と叱責される。
リモートワークで生まれたオンライン飲み会ですが、参加しないことで仲間外れにされたり強制的に参加させられたりといった、リモハラの温床となっています。
リモハラを防ぐためには?自己防衛策3選
リモハラは加害者側がリモハラの知識を身に着け、しないように意識したり、自分の行動や発言で相手が不快な気持ちにならないか配慮したりすることが大切です。
しかし相手にリモハラの意識が欠けている場合は、リモハラを防ぐことは難しいのが現状ですよね。
そこで受け手側としてもできるだけリモハラの被害を受けないように自己防衛することも意識しましょう。
リモハラからの自己防衛策を3つ紹介します。
仮想オフィスをつくる
自宅の部屋やリビングでリモートワークをする場合、プライベート空間ではあなたの私生活はどうしても垣間見えてしまいます。
気を付けたいのは背景です。
WEBカメラを使って部屋を映す際は、なるべく私生活に関するものを見せないことが大切です。
例えば、脱ぎっぱなしや干しっぱなしの衣類、本棚や飾りなど背景に何も映らないように整理整頓すること、または白い布やカーテンを使ったり仮想背景を使ったりオフィス空間を作ることをおすすめします。
身だしなみは整えて
いくら自宅といっても、リモートワークは業務のひとつであり勤務時間です。
カメラを使わない場合でも、ノーメイクにパジャマ…というのはNG
急にオンライン会議が始まることもありますし、万が一映ってしまう場合もあります。
社会人として仕事をしているという意識を持ち、服装や身だしなみを整えて仕事に取り組むようにしましょう。
仕事とプライベートの線引きを意識する
リモートワークではプライベート環境で仕事をしているため、相手との距離感が曖昧になりやすいとお伝えしました。
そこで発生しやすいリモハラを防ぐためには、業務に関係ない発言や連絡を控えることが大切です。
マネジメントする立場である上司はもちろん、部下である立場であっても同様です。
雑談をしている際でも上司と話していることを意識し、同僚間での発言についても気を付けましょう。
改善されないリモハラ!思い切って転職もアリ
リモハラはコロナ禍をきっかけに注目され、まだ知名度が低いため加害者側も被害者側もリモハラの意識が低いケースがあります。
しかし、定着して間もないことやパワハラやセクハラを複合的に含んだハラスメントであることから、知らないうちに被害者のメンタルを落とし込んでいくハラスメントです。
コロナ禍はまだ落ち着いた状況とはいえず、地方や海外の人材活用も検討される企業ではリモートワーク化はどんどん進んでいきます。
リモートワークはコロナ禍のニューノーマルではありますが、リモハラを放置している企業やリモハラ体質の企業では、時代に乗れない企業であることが分かります。
うまく方向転換できていない、アフターコロナに生き残ることは厳しい企業なのです。まだまだ認知度が低く加害者意識が薄いリモハラ。リモハラが続く企業や意識が変わらない上司のもとでは、どう対策してもハラスメント体質は変わらないでしょう。
リモートワークの業務体制がしっかり整っている企業では、リモハラに悩むことなくストレスのない仕事を続けることができます。
リモハラが解消されない場合は、思い切って転職を検討するのもひとつの方法といえるでしょう。
【まとめ】リモハラの意識と知識を身に着けよう
いかがでしたでしょうか?
今回は、リモハラが起きる要因や事例、対策等について紹介しました。
事例を参考されて「これもハラスメントなの?」と思った方もいるかと思います。
リモートワークはコロナ禍で導入され、アフターコロナでも働き方の選択肢のひとつとして継続されるでしょう。
しかし現状では5人に一人がリモハラを受けているともいわれ、リモートワークが定着されることでさらに増えていくと予測されます。
企業はハラスメント対策を強化し、リモートワークの環境整備を早急に整え、リモハラを防止する必要があります。
そしてリモートは、相手との距離感が掴みにくく職場とプライベートの線引きが曖昧になりやすい環境での業務なので、リモハラを防ぐため以下のことに気を付けることが大切です。
- 自分の行為や発言が相手にとって不快な思いにならないか配慮する
- リモハラを誘発しないようビジネス意識をもつ
リモハラへの意識・知識を深める 自分が加害者にならないように、またリモハラの被害者にならないように心がけましょう。
くららさん