【作:凪ぱるこさん】
看護師の3Kと言えば「きつい」「汚い」「危険」の頭文字を取ったものとして有名です。しかし、実際に働いている看護師でなければ、なぜ3Kと言われているのかわからない方も多いかと思います。
今回は看護師の3Kの意味と、新しく派生した6K・9Kについて解説していきます。元看護師の筆者が実際に体験した3Kについてもご紹介しますので、看護の仕事について深く知るための参考にしてください。
この記事の出典
看護師の3Kの意味とは?
看護師の3Kは「きつい」「汚い」「危険」を意味しています。なぜ3Kと言われているのか、その意味を解説します。
きつい
看護師が「きつい」と言われる理由は、体力的・精神的に大変な仕事であることが関係しています。
看護師の多くは病棟に勤務しており、日勤と夜勤を繰り返しています。
勤務中は患者様への処置や移乗介助、体位変換、検査への移送などがあるため体力が必要です。
また、患者様とその家族への対応、ミスが許されない緊張感、職場内での人間関係にも気を使うことから精神的にもきついとされています。
そして、看護師は分刻みでスケジュールを考えて行動しているため、多忙さも影響して「きつい」と言われることが多いです。
汚い
看護師の仕事は綺麗なことだけではなく、陰部洗浄やおむつ交換、痰の吸引、ストーマの交換、摘便などの処置も行います。
患者様の身体を清潔に保ち、安全・安楽に過ごしてもらうには、ほぼ毎日処置しなければなりません。
特に寝たきりで自分から動けない方は、自ら排泄できないため、看護師の介助が不可欠です。
毎日排泄物や汚物を処理することで、制服を洗ってもにおいが取れていないように錯覚することも珍しくありません。
危険
看護師の仕事には「危険」もあります。
代表的なのが針刺し事故や放射線被ばく、体液からの感染です。
看護師は日常的に患者様への処置を行っていますが、ちょっとした不注意から針刺し事故を起こす危険とは常に隣り合わせです。
また、注射や採血をした後の針の処理が不適切で、血液感染を起こすリスクもあります。
重大な事故につながることは少ないですが、仕事に慣れてきた新人や若手は気が緩みやすいため注意が必要です。
他にも、認知症や精神疾患で暴力的になった患者様への対応、インフルエンザやコロナウイルス、結核への対応なども危険が伴います。
看護師は、様々なリスク要因を分析し、回避する能力が求められる仕事といえます。
3Kから変化した6K・9Kとは?
従来は看護師といえば3Kでしたが、時代とともに6K・9Kへと変化しています。3Kにプラスされた6K・9Kとはどのようなものかご紹介します。
- 給料が安い
- 規則が厳しい
- 休暇が少ない・取れない
- 婚期が遅れる
- 化粧ノリが悪い
- 薬が欠かせない
給料が安い
新しいKの1つに給料の安さが挙げられます。
看護師の給料の安さは、仕事へのネガティブなイメージにつながっています。
しかし、令和4年の賃金構造基本統計調査によると、
看護師の平均年収は508万1,000円
となっている一方、
国税庁の発表する日本の平均年収は458万円です。
看護師の給料は、日本の平均よりも高いことがわかります。
それでも「給料の安さ」が6K、9Kに入るのは、仕事の大変さの割に給与が安いためでしょう。
参考:jobtag 『看護師 令和4年賃金構造基本統計調査』
e-Stat 『賃金構造基本統計調査/令和4年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種』
規則が厳しい
病院や施設によって規則は異なりますが、基本的に看護師は厳しい規則が多い職業です。
例えば、髪の毛を明るい色に染めない、パーマをかけない、靴と靴下は白を選ぶ、ピアスはしないなどがあります。
他にも副業禁止、私語禁止などを規則にしている施設もあります。
患者様の命と健康を守るという観点から、信頼できる看護師でいるために必要な規則ですが、厳しいと感じている看護師も珍しくありません。
ただし、日頃から身だしなみに気を使っている人にとっては、それほど厳しいとは感じない規則です。
普段から看護師としての自覚を持って生活することで、自然と厳しさは感じなくなるでしょう。
休暇が少ない・取れない
看護師の休暇の少なさや有給休暇の取りにくさも9Kの1つに入っています。
しかし、日本看護協会の調査によると、2022年の有給取得率は65%です。
一方、厚生労働省の令和4年就労条件総合調査の概況によると、日本全体での有給取得率は58.3%となっています。
このことから、看護師の休暇や有給が取りにくいとは言い切れず、むしろ一般企業よりも取得しやすいことのほうが多いです。
それでも6K・9Kに入る理由は、
- 希望した日に休日がもらえない
- 多忙で友人と休日が合わない
などのケースが多いため、休暇が少ないと感じやすいからかもしれません。
日本看護協会 『2022年 病院看護・助産実態調査 報告書』P14
婚期が遅れる
看護師は比較的婚期が遅い人が多いことから、9Kの1つとして結婚のしにくさを挙げている人もいます。
結婚に関しては人によって千差万別ですが、婚期が遅くなる理由には、看護師のキャリアが関係している可能性があるでしょう。
- スキル習得に多くの時間を費やす
- 仕事に多くの時間を割いている
- 夜勤があるため人と会う時間がとれない
こうした要因が重なり、看護師の晩婚化につながっている可能性はあります。
キャリアを重視するか、結婚を含めたライフプランを重視するかで、9Kと感じるか否かは大きく変化するでしょう。
化粧ノリが悪い
女性看護師にとって気になるポイントが、化粧ノリの悪さです。
看護師は日勤と夜勤が交互にあることに加え、生活リズムの乱れで肌荒れや乾燥に悩んでいる方も多いです。
また、仕事に疲れてメイク落としをせずに眠ってしまう人もおり、肌にダメージが蓄積している人が少なくありません。
そうした生活が続くことで肌が荒れ、化粧ノリが悪いと悩む看護師は多いです。
薬が欠かせない
地方の看護師は人手不足が深刻で、休みが少ないことも珍しくありません。
休みが少なければ体調を崩しやすくなり、風邪や頭痛に悩まされる人もいます。
また、精神的にも疲労が蓄積し、心療内科に通院する場合もあります。
そのような状況でも、人手不足では頑張って出勤しなければならず、薬を手放せない看護師は多いです。
特に夜勤は急に欠勤すると別の看護師に迷惑がかかるため、無理をしてでも出勤する必要があります。
すべての看護師が薬を必要としているわけではないものの、薬に頼らざるを得ない人がいることも確かです。
看護師の3K・9K体験談
看護師の3K・9Kのリアルについて理解するために、筆者の体験した出来事や他の看護師の体験談をご紹介します。
体験談1:1週間で体重が3㎏減少!
1つ目は、看護師として仕事にも慣れた7年目の頃、外科外来での激務で体重が1週間で3㎏落ちた経験です。
そのころ筆者のいた外来では、救急搬送や緊急手術が必要な患者様が、毎日しかも複数回搬送されていました。
加えて、吐血や下血する患者様が立て続けに出てしまったことがあったのです。
他の看護師にも応援要請を行いましたが、人手が足りず、最小限の人数しか回してもらえませんでした。
そのため昼休憩なしで対応し、連日4時間以上の残業をしていました。
帰宅しても、仕事の疲労で食事が喉を通らず、1週間で3㎏痩せてしまったのです。
食事が摂れないために体力が続かず、余計に体調が悪化する結果になりました。
体験談2:処置中に吐物を浴びる
2つ目は筆者が内科病棟の新人だった頃のことです。
経鼻カテーテルを挿入中に患者様が嘔吐反射を起こし、噴水のように吐物を吐き出してしまいました。
胃の中に残っていた消化しきれていない残渣物が勢いよく筆者にかかってしまったのです。
ビニールエプロンはしていましたが、ズボンや靴は吐物まみれになり、処置が終わってすぐに交換することになりました。
看護師は排泄物や吐物の処理をする機会も多いです。
注意しなければ衣類が汚染される危険があるという典型的な例と言えるでしょう。
体験談3:針刺し事故で医療事故報告
看護師は日常的に注射器を使用しますが、使い慣れていても不注意で針刺し事故を起こすことはあります。
筆者の同僚の看護師が、知的障害のある患者様の採血をしていたところ、患者様が突然暴れ出し、持っていた針が看護師に刺さってしまったことがありました。
針刺し事故による血液感染は大きな問題となるため、事故に遭った看護師は医師の診察も受けました。
看護師はB型肝炎抗体のチェックや1カ月後の検査で、血液感染はないと診断されました。
看護師の仕事はたとえ慣れていても、予期せぬ出来事で危険にさらされる可能性があることを象徴している事例と言えるでしょう。
体験談4:大学病院の同期より給料が安い
看護師の給与は病院や施設によって初任給、上昇率が大きく異なります。
筆者が総合病院に勤めて5年目の時、国立大学病院で働く同期の給料を聞いてみたことがあります。
すると、大学病院の給与の方が大幅に上でした。
その分業務が大変なのかと思いましたが、聞いてみたところ、筆者よりも比較的楽な業務が多かったです。
勤務先による給料の違いをはっきりと感じることになりました。
大変なポイントは人それぞれ異なりますが、仕事内容と給料のバランスが合っていると感じられる職場を選ぶことが非常に重要です。
看護師がポジティブになれる「新しい3K」とは
看護師の3K・9Kは、これまで大変さや苦労などのネガティブなイメージを持たれることが大半でした。
しかし、時代とともに看護師の仕事へのイメージも変わり、新しい3Kの概念も生まれています。
新しい3Kとは「感謝」「関心」「共有」の3つです。看護師が仕事を続けていくために重要な3つを表しており、3Kをポジティブな意味で捉えています。
今後は看護師の3Kに対して、ネガティブなイメージだけでなく、ポジティブなイメージで認知される機会も増えるでしょう。
感謝の心
看護師の仕事は患者様の治療を支えるものであり、患者様や家族から感謝されることも多いです。
看護の仕事には大変な面もありますが、実際に関わった患者様からの感謝の言葉は、看護師にとってやりがいになるポイントです。
また、医療現場はチームで動くものですから、自分自身も同僚の看護師に対する感謝の気持ちを持ちましょう。
一緒に働く仲間への「感謝」を忘れなければ、困った時には助けに入ってくれることも多く、ポジティブな気持ちで仕事を続けられます。
関心を向ける
看護師は患者様だけでなく、周囲の環境、物事にも関心を持ち続けることで、洞察力が磨かれます。
患者様やその家族に最も近い存在である看護師は、わずかな変化にも気が付くことが大切です。
そのためには、人や物事に向ける関心を大事にしなければなりません。
ただの仕事として患者様に接するのではなく、一人の人間と接している意識を持ち、一人ひとりを深く理解しようとする努力が必要です。
「関心」を持つことは、看護師が良い医療を提供するために重要なポイントになります。
共有する気持ち
看護師はチーム医療の要ですから、仕事で気付いたことは周囲の同僚と共有することが大切です。
看護は自分だけではできませんから、看護師それぞれの気付きを意識的に共有するとより良い医療を提供できます。
また、共有することで悩みや課題の解決につながることもあるため、抱え込まずに相談することが大切です。
「共有」の気持ちを意識し、周囲の人と色々な情報を伝えあいましょう。
看護師が3K・9Kでも仕事を続けていくには
看護師の仕事はきつい・汚い・危険の三拍子が揃い、大変な仕事というイメージがあります。
現在ではさらに増えて9Kとも言われますが、大変なことがあっても看護師を続けていくには、仕事の中に楽しみを見つけることが重要です。
どんなポイントを意識すればよいのか、仕事を続けるためのコツをご紹介します。
自分なりの幸せや価値観を大事にする
仕事でつらいこと、大変なことが多いと自然と気分が落ち込み、不安や焦りの感情が強くなってしまいます。
特に患者様と接する中で、患者様の心のケアをしているつもりが、徐々に自分のメンタルまで追い込まれる人も少なくありません。
看護師も人間ですから、気持ちが落ち込んできた時は、自分が幸せや楽しいと感じることを優先しましょう。
看護師が笑顔で穏やかな態度で接してくれれば、患者様の気持ちも次第に落ち着いていきます。
看護の仕事がつらいと感じた時は、仕事を一時でも忘れられる瞬間を作ることも大切
プライベートを全力で楽しむ
幸せや楽しさにもつながることですが、患者様から人気のある看護師は、プライベートを全力で楽しんでいる傾向があります。
なぜなら、プライベートであった出来事を同僚や患者様とも共有し、様々な人とコミュニケーションできるからです。
プライベートや人生を楽しんでいる看護師は、患者様の変化や回復にも素直な気持ちで向き合い、相手を明るい気持ちにさせてくれます。
病に苦しむ患者様へのケアを行う看護師だからこそ、患者様が希望を感じられる生き方を
人とは比べない
人間にはそれぞれ個性がありますから、他の看護師と比べて悲観することはやめましょう。
3K・9Kが続くと体力的・精神的に追いつめられ、人と自分を比べて、劣っているように感じることがあります。
しかし、人と比べると気持ちだけが落ち込んでいき、悪循環に陥るだけです。
他者と自分を比べるのではなく、他者の良いところを自分も取り入れるように意識するのが良いでしょう。
焦りや悩みはミスにつながりかねない。自分のペースでできることを着実に進める
まとめ:看護師の仕事はポジティブな3Kを意識すればやりがいにつながる
看護師は「3K」のイメージがあり、ネガティブな印象を持たれることもありました。しかし、近年はポジティブな方向で3Kを捉えることも多くなり、以前に比べて大変と思われることは少なくなっています。
時代とともに3Kも変化し、看護師の仕事はやりがいがあり、安定した仕事として認識されるようになりました。もちろん、今でも3Kや9Kに当てはまる職場もありますが、専門性を生かしたやりがいも増しています。
どうしても「職場がつらい」と感じる看護師の方は、自分に合った職場探しも選択肢の一つです。看護師としてキャリアアップしていくためにも、ポジティブな3Kを意識して仕事を続けましょう。
凪ぱるこさん
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2024/8/5
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