女性の割合が多い看護師は、ライフイベントや家庭の事情などで現場から離れる方も少なくありません。40代以降になって生活がある程度落ち着いたため復帰しようとしても、ブランクが長ければ不安になる方もいるでしょう。
そこで今回はブランクのある看護師向けに、必要な準備や注意点、復帰におすすめの職場などを元看護師が解説します。実際にブランクのある中で復職した人を見たからこそわかるポイントについて、詳しく紹介していきます。
この記事の出典
ブランクのある看護師と取り巻く環境
ブランクがあり、資格を持っていても働いていない看護師を「潜在看護師」と呼びます。潜在看護師が日本にどの程度いるのか、なぜ潜在看護師が多いのかご紹介します。
潜在看護師は70万人以上いる
ブランクのある看護師は全国にいるとされており、令和2年度の調査では潜在看護師数は男女合計で51万8,153人、准看護師まで含めると79万人にも及びます。
男女比は約9割が女性であり、女性看護師を取り巻く環境が潜在看護師数の増加につながっていると言えるでしょう。ブランク期間の長い看護師もおり、看護師の人材不足を解消するには潜在看護師の活用が必須とされています。
ブランクがあっても看護師はどの医療・介護現場でも必要とされていることから、自由に職場を選べるでしょう。
参考:厚生労働科学研究成果データベース 『潜在看護職員数の推計』P13~17
結婚・産休・育休で現場を離れる看護師が多い
ブランクのある看護師や潜在看護師の年齢階級を見てみると、30~34歳が36.91%、35~39歳が36.01%となっています。30代が突出して高い理由には、結婚・出産・育児といったライフイベントが多く、不規則なシフトの多い勤務が困難なことが大きい点があります。
看護師は夜勤や残業が多い職業特性上、多様な働き方を求める年代とのミスマッチが起こっていることが大きいでしょう。
また、40代以上の看護師も子供の成長や自身の年齢に伴い、様々なライフイベントを経験します。そのため、潜在看護師としてブランク期間が長くなりやすく、現場復帰のタイミングを逃してしまう方も少なくありません。
参考:厚生労働科学研究成果データベース 『潜在看護職員数の推計』P22~24
ブランクのある看護師が抱えやすい不安
ブランクの長くなった看護師にとって、復帰への壁となる不安や心理的なハードルは何かをご紹介します。
最新の医療現場についていける自信がない
ブランクのある看護師にとって、長年医療現場を離れたことで現在の状況を想像できないことが不安につながります。病院で働いた当時は高いスキルを持っていても、現場を離れている間に技術力は自然と落ちてしまいます。
医療現場の常識は数年で変わってしまうことも珍しくはなく、ブランクのある看護師にとって現場復帰は不安なことが多いです。新しい医療機器や医療技術が求められることもありますが、その場合は事前に知識を得ておくことで不安軽減に役立ちます。
患者様への処置・検査が怖い
ブランク明けの看護師にとって、患者様への処置・検査は強い不安を感じやすい点です。特に看護師は注射や傷口の処置など、患者様の身体への侵襲を伴う業務内容が多いため、ちょっとしたミスが大きな事故につながる危険があります。
経験豊富な看護師ほどそうしたリスクを理解しており、ブランク明けの自分の技術を不安視して不安になる方が多いです。その場合、まずは基本的な注射や採血などの看護技術で感覚を取り戻し、徐々に不安を取り除くのが望ましいです。
看護師を続ける以上、患者様への処置は避けられませんから、基礎技術の実践で自信につなげましょう。
電子カルテの操作を覚えられるか不安
現代の病院やクリニックでは、電子カルテを導入しているところも増えています。特に規模の大きな病院ほど利便性を高めるため、電子カルテを導入するのが一般的です。
しかし、ブランクの長い看護師は電子カルテに触れる機会が少なく、復職後に操作を覚えられるか不安に思う人もいます。筆者の同僚にも10年以上現場から離れており、復帰直後は電子カルテの操作に戸惑っている方がいました。
しかし、電子カルテの基本的な操作を覚えてからは、不自由なく働いていました。電子カルテの扱いを覚えるまでは戸惑いもあるでしょうが、理解してしまえば不安は払拭できます。
ブランクがあると再就職できるか心配
一般企業の会社員の場合、ブランク期間があると転職や再就職の障害になりやすく、問題のある人材と評価される可能性があります。しかし、看護師は一般の会社員とは異なり、ブランクが復職・再就職にあまり影響しない職種です。
もともと女性中心の職種だったこともあり、結婚・出産・育児による離職や休職者が多く、ブランク期間があっても人事評価や採用面に影響が少ないためです。
筆者の知る看護師も、子どもが小学校に入学するまでの7年間ほどブランクがあったものの、すぐに再就職が決まっていました。ブランクが再就職や復職に全く影響なしとは言い切れませんが、不安になるほどの影響はないと考えてよいでしょう。
ブランクが長いので同僚からどう見られるのか不安
長いブランクから復帰する際、一緒に働く同僚からどう見られているのかと不安になる方もいます。スキル不足や知識不足と思われることを心配する方もいますが、実際にはそれほど不安になる必要はありません。
看護師はほとんどが女性であり、同僚にも出産や育児でブランクを経験した人がいるケースがほとんどだからです。ブランク明けは誰もが不安な気持ちを抱えていますから、仕事面でもサポートや配慮をしてくれる可能性があります。
また、以前と違う点やわからないことがあっても、素直に周囲を頼るようにすれば、同僚からの助けを得られるでしょう。
看護師はブランクが10年以上あっても復帰できる
「看護師はどのくらいまでならブランクがあっても大丈夫なのか」と気になる方も多い方も多いかと思います。結論から言うと、ブランクが10年以上あっても問題なく復帰できます。
20代後半または30代から現場を離れ、40代になってから復帰を目指す看護師の方も多いでしょう。そうした方には、ブランクのある看護師向けの学習サポートやアプリは豊富にあるため、知識を身に付けるには自己学習でも十分です。
技術面に関しては復職前の研修で採血研修や練習、アセスメントの視点なども学べます。たとえ長いブランクがあったとしても、看護師として再び働く意欲さえあれば復職や再就職ができます。
看護師がブランクから復帰する際の注意点
看護師がブランクから復帰する際、どのような点に注意すべきかご紹介します。
復職前に家族と相談して協力を得る
家庭内で役割が決まっている方は、働きに出るために家族からの理解を得る必要があります。仕事に出ると家庭内での家事の分担、役割も変わってくるため、お互いに協力しなければ生活が難しいからです。
例えば、ある程度時間の融通が利く家庭でも、子供の送迎や食事の準備、家族の世話などで外せない役割があるでしょう。そうした事情を考慮しながら、家族間でフォローが必要な部分を決定することが大切です。
自分のスキルを生かせる場所を考える
看護師がブランクから復帰するには、どこで働くかを考えることも重要です。復帰前は内科での経験しかない方が、復職後に外科や手術室で働くのは非常に難しいでしょう。
以前の自分がどこで経験を積み、どんなスキルを磨いてきたか振り返り、スキルを生かしやすい職場がどこか考えてください。また、体力に自信がないのであれば、夜勤がない外来や訪問看護、デイサービスなどの選択肢もあります。
自分が働きやすい場所はどこかを事前に考えておくと、職場復帰の方針も立てやすくなります。
扶養や社会保険の範囲内で働くか決める
家族で共働きをしている方の場合、配偶者の扶養範囲や社会保険加入内で働くかどうか決めておくことも重要です。まず、配偶者が正社員雇用されている場合、扶養範囲内で働くなら年収130万円以内に収めなければなりません。
また、短時間勤務でも年収106万円以上、月額賃金では8万8,000円以上になると、社会保険への加入が必須になります。社会保険料の支払いや所得税の控除についても考慮したうえで、家計にとってどちらが特になるか計算することが大切です。
ブランクがあっても働きやすい職場5選
ブランクのある看護師でも働きやすい職場を5種類ご紹介します。
クリニック・診療所
ブランク明けで体力や技術に不安のある方には、クリニックや診療所がおすすめです。病院のように救急搬送や急患が運ばれることもなく、安定した仕事ができます。
特殊な手術を行うクリニックを除けば、基礎看護技術さえあれば働ける点もメリットです。また、比較的時間の都合も利きやすいため、短時間勤務を希望する方にも向いています。
健診センター
健診センターも短時間勤務が中心で、夜勤なしの働き方を希望する方に向いています。看護師が現場を離れるきっかけには、育児が関係するケースも多く、健診センターならワークライフバランスも充実しており働きやすいでしょう。
ただし、繁忙期には朝早く出勤することもあるため、家族にも仕事の事情を伝え、理解してもらうことも大切です。医療現場のように高度な専門性は求められないため、ブランクがあっても再就職しやすい職場です。
介護施設
ブランクの長い看護師の場合、介護施設はバイタルサイン測定や身体介助が中心となるためおすすめです。看護師にとって患者様への身体侵襲を伴う処置は不安がつきものですから、そうした処置がほとんどない介護施設は働きやすいでしょう。
そして、特別養護老人ホーム(特養)やデイサービス、介護老人保健施設などであれば、看護師経験を生かしながら働くのにも向いています。ただし、介護施設には看護師が少ないため、利用者の健康に対する責任感が強い点は理解しておくことが大事です。
保育園
保育園は土日祝日の休みが多く、決まった休みがある分ワークライフバランスの整った職場です。子供の体調不良や怪我の手当が中心となるため、難しい医療行為や命に関わる判断を要求されることはありません。
また、子育て中の方は自分の経験を生かし、子供との関係構築もしやすいことから働きやすいでしょう。ただし、保育園には看護師を1人だけ置いていることも多いため、責任感の大きさと倍率の高さを理解したうえで応募してください。
訪問看護
訪問看護は短時間勤務を希望する方におすすめの職場です。給与は時給制が多く、担当者に提供したサービスの時間が仕事時間として換算されます。
患者様によって求められる処置が大きく変わるため、様々な現場を経験した看護師に向いた働き方です。地域密着型のサービスが多く、自転車や自動車など様々な移動手段で患者様の自宅へと訪問します。
訪問する自宅によっては移動距離が長い日もあるため、ある程度体力に自信のある方におすすめです。
看護師がブランクから復帰する前にしておきたい準備
ブランクから復帰する看護師が、準備しておきたいことを3点ご紹介します。
最新の医療知識や技術を学ぶ
ブランクが長い方は現在の医療現場の常識や知識、技術を学んでおくことをおすすめします。学びの方法は書籍だけでなく、インターネットや動画サイト、アプリなど色々な方法があります。
また、通信教育で学ぶ方法もありますから、復職を目指す職場に応じて最新の知識を学ぶことが重要です。面接の場で必要な知識について質問し、復帰前までにチェックするのもよいでしょう。
復職・再就職支援制度を利用する
日本においては潜在看護師の人材活用が課題になっており、各自治体の看護協会(ナースセンター)では復職・再就職支援制度が用意されています。実務でも実際に行う採血研修、点滴の練習、感染予防の考え方など基礎看護技術が学べます。
看護協会は看護師ならほとんどの方が登録している団体ですから、希望すれば基本的に誰でも受講できる点がメリットです。復職に向けて仕事の紹介も行っていますから、ブランク明けで働ける職場を探している方は相談をおすすめします。
なぜブランクがあるのか説明できるようにする
復職や再就職にあたっては、なぜブランク期間ができたのか明確な説明ができることも重要です。例えば、子供を何人か育てており、ある程度子供が育ったタイミングで復職する看護師も少なくありません。
ブランクができた理由を説明できれば、採用される可能性も高まるでしょう。逆に、ブランクに明確な理由がない場合、仕事への意欲が低いとみなされるリスクがあります。
過去には、義母が亡くなるまで在宅で介護を行っており、介護する家族がいなくなったことをきっかけに復帰した看護師もいました。復帰できなかった理由によっては、その経験を生かしやすい職場で実力を発揮する機会も得られるでしょう。
ブランクのある看護師におすすめの転職支援サービス2選
ブランクのある看護師におすすめの転職支援サービスを2社ご紹介します。
レバウェル看護|初めての転職やブランクのある看護師向け求人が豊富
レバウェル看護は正社員求人だけでなく、短時間勤務や地方の中小規模の病院まで幅広い求人が掲載されている看護師向け転職エージェントです。初めて転職する看護師やブランクのある方の再就職にも強い点が特徴です。
看護師求人が豊富で、託児所や土日休み、研修内容などの細かな条件を指定して仕事を探せます。また、看護師向けの職場適性診断を利用すれば、いくつかの質問に答えるだけで自分の適性やライフスタイルに合う求人がわかる点もメリットです。
病院やクリニックだけでなく、介護施設、訪問看護、福祉施設、保育園まで幅広い条件で職場を検索できます。都道府県別に求人を検索できますから、地元で仕事を探したい方も都市部の優良求人を探したい方にも利用しやすいサービスです。
公式サイト | https://kango-oshigoto.jp/ |
おすすめポイント | 転職に不慣れな方やブランク明けの方でも、地方・都市部を問わず幅広い求人をチェックできる |
看護roo!|サポートの質が高く、転職先の詳細な情報ももらえる
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担当者のサポートが充実しており、ブランク明けで再就職や復帰が不安な方でも、希望すれば採用面接に同席してくれます。伝えにくい条件でも担当者がサポートしてくれるため、楽な気持ちで面接を受けられるでしょう。
また、募集停止中の求人もチェックできるため、気になる求人があれば担当者に伝えることで、求人の有無を職場に直接確認してもらえます。担当者が職場の内部事情も確認してくれるため、転職後のミスマッチも防げます。
公式サイト | https://www.kango-roo.com/ |
おすすめポイント | 担当者のサポートの質が高く、復職や再就職の相談がしやすい |
まとめ:ブランクがあっても看護師は再就職を成功させやすい
看護師は医療現場を支える大事な職業の一つであり、医療分野だけでなく介護・福祉分野にも活躍の場を広げています。現場を離れてからの期間が長く、ブランクが気になる方でも、視野を広げれば看護師として活躍できる場は数多くあります。
自分の経験や技術を生かせる職場を探せば、ブランク明けでも第一線で活躍できる看護師になれるでしょう。ブランクの期間が10年、20年以上あっても、実際に現場で必要とされる看護師はたくさんいます。
復帰までに不安なことを明確にし、最新の医療知識を学ぶことで、再就職に備えましょう。看護師として働く意欲とバイタリティを大事にして、再び現場で活躍することを目指してください。
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