2025年問題により看護師不足が不安視される中、潜在看護師の復帰を促し、看護師人材確保を進めようとする動きが活発です。しかし、潜在看護師にはそれぞれ理由があり、復帰しない人や復帰できない人がいます。
今回はなぜ潜在看護師が復職しないのか、復職を成功させるコツや働き方のポイントなどを詳しく解説します。潜在看護師から現役に復帰を目指している方は、本記事を参考に復職や再就職を成功させましょう。
日本の潜在看護師数と離職の多い年代
日本では潜在看護師数が年々増加を続けており、看護師の人材不足が問題になっています。日本の潜在看護師数の現状と、離職の多い年代について解説します。
潜在看護師は79万人以上
日本の潜在看護師数は2012年時点では約71万人でした。しかし、令和2年の調査では看護師・准看護師を合わせて推計79万人以上に増加しており、増加ペースは衰えていません。
看護師資格の保有者だけでも51万人以上が離職状態にあり、看護師不足が深刻化する2025年問題の解決には潜在看護師の復帰が鍵になるでしょう。潜在看護師に多い年代は30~34歳36.91%、35~39歳が36.01%を占めており、大半が30代であることがわかっています。
30代で離職し、そのまま復帰せずに長年過ごす方も多いことから、不足する看護師人材の確保には離職した看護師が現場に戻りやすい環境を整備することが必須です。
参考:厚生労働科学研究成果データベース 『潜在看護職員数の推計』P13~17
30代の離職者が多い
潜在看護師の多くは30代であり、離職理由の多くは結婚・出産・育児とされています。看護師は夜勤が月8~10回、勤務が不規則で残業も多いことから、子育て中の人には厳しい面がある仕事です。
そして、日本における第一子の平均出産年齢は30.9歳となっており、女性看護師の離職が多い年代と合致しています。また、潜在看護師が復帰しない理由も「出産・育児」が34.4%、「結婚」が17.9%となっています。
看護師は医療機関という特殊な環境で働く仕事であり、子育てをしながら復帰するのは難しい事情があると捉えてよいでしょう。
参考:厚生労働科学研究成果データベース 『潜在看護職員数の推計』P22~24
8割以上が復職を希望しているが復職できていない
潜在看護師は30代に多いことから、復職や再就職を希望する方は多いです。大阪労働局の調査では、85%の潜在看護師が復帰を希望しながら、一方で復帰できない葛藤を抱えています。
復帰できない理由として、以下の理由が挙げられています。
- 夜勤ができない
- 急な休みが取れない
- 職場の受け入れ環境が不安
- 現在の医療技術についていけない
- 責任が重く、医療事故が怖い
- 子供を預けることができない
労働環境や子育て、医療に携わる責任感などの問題があり、復帰に踏み切れない方がたくさんいます。つまり、潜在看護師は復帰しないのではなく、復帰できない方が多いと考えるべきでしょう。
一方で、復帰できない理由や悩みを解決できる職場や窓口があれば、潜在看護師の減少にもつながるでしょう。
潜在看護師が再就職や復職をするために準備しておきたいこと
潜在看護師が再就職や復職を目指すために、どんなことを準備しておくべきかご紹介します。
勉強のし直し
潜在看護師のブランク期間は人にもよりますが、長ければ10年以上現場から離れていることもあります。医療業界は年々進歩しているため、しばらく現場から離れているとあっという間に知識は古くなってしまいます。
そのため、再就職や復職を目指すには、まず医療や看護の勉強からやり直すことが重要です。潜在看護師向けの再就職支援制度やセミナー、参考書、インターネットなどから情報を収集し、最新の知識にアップデートしましょう。
無料で利用できるアプリもありますから、隙間時間に勉強し直すなら様々な方法があります。復職に向けて必要な知識を学び直し、現場復帰がスムーズになるよう行動してください。
復職支援制度の利用
各都道府県にあるナースセンターでは、潜在看護師向けの復職支援制度があります。ナースセンターではブランクのある看護師向けに、採血練習や最新治療の知識、感染予防の研修などを行っています。
利用は無料ですから、復帰前に知識と技術を学び直したい方におすすめです。基本となるスキルを学び直しておけば、復職や再就職にも不安なく臨めるでしょう。
ブランクの長い人ほど、復職支援制度の利用するメリットは大きいです。
職場の希望条件を明確にする
再就職や復職を進めるにあたっては、自分がどんな職場で働きたいか条件をはっきりさせておくこともポイントです。失敗しやすい例としては、求人票の給与や労働時間などの良い部分だけを見てしまうパターンです。
復帰するには今の自分のライフスタイル、知識・体力・技術力、興味のある分野なども考慮しましょう。特に復帰して間もない間は身体が慣れていないため、疲労とストレスで体調を崩すおそれもあります。
現在の生活に無理のない範囲で働ける条件を考え、どのような職場なら働きやすいか決めておくことが大事です。
家族からの理解を得る
看護師として復帰するには、家族に相談して理解を得ることも重要です。特に子育て中の方であれば子供の送迎、家事の分担、どのくらいの頻度で働きに行くのかなどを決めなければなりません。
理解を得ないまま復帰してしまえば、家族関係が悪くなってしまう可能性もあります。そのため、復帰するための前提条件として、家族とも繰り返し相談し、お互いが納得できる条件で働くようにしましょう。
そして、仕事と生活に慣れてきたら、その都度家族と相談して働き方を変え、ワークライフバランスの維持を意識してください。
潜在看護師が復職を成功させるコツ
ブランクのある看護師が復帰するには、職場選びも重要になります。そこで、潜在看護師が復帰を成功させるコツについてご紹介します。
ブランクに理解のある職場を探す
潜在看護師の多くは、復帰にあたって知識や技術、体力面での不安を抱えています。不安を抱えたまま復帰するのは大変ですから、職場選びではブランクにも理解のある職場を選ぶことが大切です。
ブランクに理解のある職場は短時間勤務への対応、残業をさせないための配慮、業務負担の大きくない部署への配属などを検討してくれるでしょう。また、必要に応じて契約内容を変更し、勤務時間の延長や有給休暇の取得を支援してくれる職場が理想です。
ブランクへの理解のない職場を復帰先に選ぶと、後悔する可能性が高いため、どのような支援をしてくれるのか確認することが大切です。
短時間勤務が可能な職場を選ぶ
復帰後にフルタイムや夜勤ありの正社員で働くと、体力が続かずに体調を崩す可能性があります。そのため、復帰先を選ぶなら短時間勤務が可能で、残業も少ない職場を選びましょう。
潜在看護師が復帰する場合、午前中のみ勤務し、正午の12時で勤務終了する職場を選ぶケースが多いです。子供の送迎時間や自分の体力などを考慮して、働きやすい職場を選ぶことを意識しましょう。
離職前の職場も復帰先の候補に入れる
看護師が復職や再就職するなら、離職前に働いていた職場を復帰先の候補に入れることをおすすめします。全く経験のない職場を復帰先に選ぶと、顔見知りもおらず、仕事にも不慣れでストレスを抱えることになるからです。
そのため、元々経験のある職場なら仕事のやり方にも慣れており、人間関係で苦労することも少なくなるでしょう。人間関係や体調の問題などの理由で離職したのでなければ、離職前の職場に復帰が可能か確認することをおすすめします。
託児所や院内保育のある職場を探す
子育て中で離職していた看護師の場合、復帰にあたって託児所や院内保育が併設されている職場を探すことも重要です。日本は共働き夫婦が多く、近隣に夫婦の両親がいなければ、子供を預かってくれる場所がありません。
そのため、安心して仕事をするには、子供の世話をしてくれる場所の有無はチェックすべきポイントです。託児所や院内保育のある職場であれば、専属の保育士が常駐しているため、急な残業が発生しても子供を任せられます。
仕事に専念できる環境を作るためにも、子供の成長までサポートしてくれる職場選びが重要です。
潜在看護師が復職する際に働きやすい雇用・勤務形態とは
潜在看護師が職場へ復帰する際、ライフスタイルを維持しながら働きやすい雇用・勤務形態を3つご紹介します。
パート・アルバイト
復帰して間もないうちは、知識や技術の低下は避けられず、慣れるまでは体力面でも苦労することが予想されます。加えて、配偶者の扶養や社会保険などの兼ね合いもあり、正社員として働くのは難しい可能性が高いです。
そのため、まずは仕事に慣れるためにパートやアルバイトとして契約し、新しい環境に適応してからステップアップするのがおすすめです。また、パートまたはアルバイトなら正社員ほど重要な仕事を任されることはなく、心理的にも楽に働けるでしょう。
短時間勤務
フルタイムで看護師として働くと、週5日朝8時過ぎから夕方5時頃まで働くことになります。体力の低下した状態ではフルタイムの連続勤務は厳しく、仕事のミスや体調不良につながるかもしれません。
そのため、午前中のみの短時間勤務や隔日の短時間勤務にすれば、体力的にも余裕をもって働けるでしょう。仕事に慣れて職場からも評価されれば、正社員登用の道も開けます。
知識や技術を身に付けるまでの見習い期間として、短時間勤務を利用するのがおすすめです。
日勤のみの勤務
日頃から体力づくりをしている方は、日勤のみのフルタイム勤務もおすすめです。週5日勤務は慣れるまで大変ですが、慣れればペース配分もつかめてきます。
また、日勤のみの勤務は生活リズムを作りやすいメリットもあり、夜勤のある不規則な勤務では体調を崩しやすい人でも、日勤のみなら体調管理がしやすいでしょう。
ただし、夕方まで働くことになるため、延長保育や学童保育に対応してくれる預け先を見つけておくことがポイントです。
潜在看護師が復職する際の履歴書のポイント
潜在看護師が仕事に復帰する際、履歴書作成で押さえておきたいポイントをご紹介します。
離職理由をポジティブな内容にする
履歴書を作成する際は、なぜ離職していたのか、離職期間は何をしていたのか、復帰を決意した理由は何かなどをポジティブに説明できるようにまとめましょう。
離職理由がネガティブなものだったとしても、できる限りポジティブな内容にすることがポイントです。ポジティブな理由の例としては、以下のようなものが考えられます。
- 子供の小学校入学を機に復帰することにした
- 家庭内が落ち着いたので再び看護師として現場で働きたい
- 以前から関心のある分野だったため挑戦したい気持ちが強かった
理由をポジティブにすることで復帰への意欲をアピールでき、人事担当者にも好印象を与えられます。
看護師経験は具体的に記載する
ブランクから復帰する際の履歴書には、これまでの看護師経験を具体的に記載することも重要なポイントです。例えば、呼吸器内科で2年、手術室で3年など具体的な診療科と経験年数を記載しましょう。
どのような経験をしてきた看護師なのか伝える役割があるとともに、人事担当者が配属先を検討する際の判断材料にもなるからです。経験のある分野ならブランクがあっても前提となる知識があり、即戦力としても期待してもらえます。
志望動機は明確にする
履歴書を作成する際には、なぜその職場を希望するのか志望動機を明確にすることも重要です。例えば、訪問看護は地域密着型の医療への関心の高さ、クリニックや診療所なら地域の住民の健康維持に貢献するなどです。
志望動機を明確にすることで、仕事内容を理解したうえで志望したことが伝わり、人事担当者への印象も良くなります。また、仕事へのモチベーションの高さをアピールでき、採用率の向上にもつながります。
まとめ:潜在看護師からの復職はワークライフバランスを意識しよう
潜在看護師が復職しない理由、復職に備えてやっておきたいことなどを解説しました。看護師が離職する理由は人それぞれです。
復帰する際は、現在の生活と仕事のバランスを考慮し、無理をしない範囲から看護の仕事を再開しましょう。復職するにあたっては、知識と技術の学び直しを行い、自分の体力とも相談しながら仕事を始めることを心掛けてください。
看護の仕事は患者様の命と健康を守る重要な仕事ですが、自分の身体を労わることも大切です。無理のない仕事から始め、現場で活躍できる看護師を目指しましょう。
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