「元々営業をやっていたから、次も経験を活かして営業に」
「今まで別職種だったけど、心機一転、営業に転職したい」
営業への転職を考える方にも、様々な理由で営業職を選ぶ方がいらっしゃると思います。明確に「この業界で営業をやりたい!」と決めている方はいいですが、営業なら別にどこでも…と考えているなら、一度「営業」という職種について深掘りしてみませんか?
一度しっかり深掘りすると、そこには営業という職種の深さと「自分の適性」が見えてくるかもしれません。転職してから気づくのではなく、転職する前に自分に合った働き方を見つけませんか?
- 人材育成コンサルタント
- 国家資格キャリアコンサルタント
- 21世紀職業財団ハラスメント防止コンサルタント
早稲田大学卒業後、大手信販会社で営業と債権管理業務を経験。その後、日本マンパワーで大手企業向けのキャリア開発研修やマネジメント研修などの教育研修サービスの企画営業に従事。営業課長に昇格後は、営業現場の業務改善や社内研修制度設計などを経験。営業コンサルティング会社へ転職後は、営業パーソン向けのスキルアップやマネジメント力強化を支援し、多くの若手営業パーソンや営業マネージャーの成果創出に貢献した。
2019年に独立し、人材育成コンサルティング及びキャリア支援を事業として営む合同会社富士みらいクリエイションにて代表を務める。組織のコミュニケーション力強化やマネジメント力強化、営業力強化等をテーマに、研修講師として通算680回以上の登壇実績。またキャリアコンサルタントとして、主にミドルシニア層の在職者中心に、年間150名以上の相談に従事。
営業には様々な種類がある
「営業」と一言で言っても、その中には様々な形態の営業職が詰まっています。営業の方法、営業をする相手、取り扱う商品や業務内容まで、いくつも分類があります。
営業といえばノルマ、成績重視、社内競争、きつい、などといったイメージから就職・転職を避ける方もいます。しかし、どんな業態の企業でも営業がいなくては始まらない、花形の職種と言って過言ではありません。
ということは、星の数ほどある企業のそれぞれの業態に合わせた営業の業務があって然るべきです。ノルマがない、競争がない、顧客に嫌がられることがない営業もいくらでもあります。
営業職に必要な基本的なスキル
そもそも、自分には営業は向いていないけど、他にできることもないから営業として働いているという声も多く聞きます。それは本当にそうなのでしょうか?
確かにどんな職種にも必要な基本スキルや適性があるもの。とはいえ、営業にはたくさんの業態があるように、あなたがもし「営業が向いていない」と感じているとして、その企業の営業に向いていないだけという可能性はありませんか?
まずは営業職として一般的に持っていると有利なスキルについて考えてみましょう。
コミュニケーション能力
自社の商品を顧客に売り込むのが営業の仕事なので、当然コミュニケーション能力は必須スキルになるでしょう。様々なタイプの相手でも、物怖じせずに話すことができれば、営業職としての適性は抜群です。
しかし、そこまでの能力が必要であるとも限りません。営業職そのものに向かないとするなら、「誰とも話したくない」「人と話すたびに緊張を強いられる」というなら確かに適性があるとは言えませんが、「人と話すのは好き」と言えるレベルなら基本的なスキルはあるのではないでしょうか。
ヒアリング能力
営業は押しすぎると逆に嫌がられます。「良いことばかりを言う」「自分の要望に合わないものを提供される」こういうトークに辟易したり、不信感を抱いた経験はありませんか?
顧客のニーズにピタリと合った商品が提供できる、自分の話を聞いてくれるという相手には、人間は心を開きやすくなります。
POINT
「聴く力」も営業になくてはならないスキルです。
ストレス耐性
営業は毎日、社内外で様々な企業や人と接することが多い職種です。時には軽くあしらわれてしまうこともありますし、反発されてしまうこともあります。その都度思い悩んでしまい、ストレスを抱えてしまっては心の負担が大きすぎます。
その場では多少落ち込んでも、すぐに切り替えられるストレス耐性は大いに役立つでしょう。
情報収集能力
常に周囲や世情にアンテナを張り、自社の商品を必要とする現場や社会などのニーズに敏感になることができれば、即座に行動に移すことができます。
論理的思考力
論理的思考力が身についていると顧客に対する説明や案内が論理立てて分かりやすく伝えることができるでしょう。また、筋道立てた思考ができるため、社内での情報共有やプロジェクトマネジメントにも役立てることができます。
清潔感
スキル?と思う方も多いでしょうが、営業に不可欠なスキルと言えるかもしれません。
人はやはり結局のところ第一印象が物を言います。第一印象で悪印象を与えてしまうと、そもそも話を聞いてもらえるチャンスさえ得られないなんてことも。身だしなみには常に気を使いましょう。
これらの能力がないからといって、やっぱり自分は営業に向いていないと考えるのではなく、これはあるけどこれはないといった自己分析を進め、ないものはこれから身につけていく、そうしたポジティブな行動力も営業に必要なスキルではないでしょうか。
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営業職の適性として、「人と話すのが得意だから」という理由だけで判断する風潮があります。しかし、営業職は「人と話す」スキルだけが求められるわけではありません。様々な企業のトップセールスと呼ばれる方の中には、「人と話すのが苦手だけど、相手に分かりやすい資料を作成して成果を出した」という方もいます。
また、人と話すのが苦手であっても、話を聴くのが得意なのであれば、相手のニーズを的確に捉えることができるのでむしろ営業職の適性があるといえます。営業職は様々なスキルが求められるので、自身の適性を活かした営業をすればよいのです。自身の適性と、企業の求める人材像を照らし合わせて、転職先を選ぶといいでしょう。
営業の種類とそれぞれの適性
次に、営業の種類とそれぞれの適性について見ていきましょう。
営業方法編
営業方法には大きく「新規開拓営業」と「ルート営業」があります。
新規開拓営業
営業職で多く持たれる「飛び込み営業」のイメージが、この新規開拓営業に当たります。今まで取引が無かった企業や個人に向けて自社商品を紹介し、顧客として継続した契約へと繋げるのが仕事です。
契約したら次は顧客対応をする別担当に預ける企業もあるので、「長く顧客とお付き合いをする」という業務を担うことはほとんどありません。
飛び込み営業・テレアポ営業・反響営業(チラシ・展示会・サイト・CMなどで顧客を獲得する営業)などの営業手法も新規開拓営業に当たります。
新規開拓営業に向いている人
- 人と話すのが好き
- 好奇心旺盛なタイプ
- 行動力がある
- 自主的にタスク設定ができ、達成できる
ルート営業
既に契約している顧客に対して営業活動を行います。新商品を紹介したり、リピート注文を受け付けたりといったのが主な業務になります。定期的に状況伺いに行ったりと、こまめなサポートが必要ですが、決まった顧客を相手にするため、比較的ストレスが低い営業と言われます。
個人としてのノルマがない企業が多いので、その点では楽な営業と言われるかもしれませんが、顧客を一つ逃すだけで多大な痛手を負いかねないリスクもあります。
ルート営業に向いている人
- 人と話すのが好き
- ヒアリング力がある
- いつも同じことを繰り返しても苦にならない
営業相手編
営業相手が「法人」か「個人」かでも営業方法は変わります。
法人営業
業界ではB to B(Business to Businessの略)とも言われます。顧客が法人となるので、利益が大きくなりがちなのが特徴です。相手もプロになる場合が多いため、より広く深い専門用語や専門知識の理解が必要になります。
法人営業に向いている人
- 常に新しい情報に敏感でいられる
- 分析力や応用力に優れている
- 勉強し続けることが苦にならない
個人営業
業界では B to C(Business to Consumerの略)とも言われます。顧客が個人となるため、専門用語を使った難しい話では嫌がられることも多いです。分かりやすく、直接的に顧客に利益に繋がるような説明が求められるでしょう。
目の前の相手が直接契約者になる場合が多く、法人営業以上に人柄や相性も大事になることが多いです。
個人営業に向いている人
- 気さくなトーク力
- 世間話でも楽しめる余裕がある
- 顧客を第一に気づかえる優しさと細やかさ
取扱商品編
有形
エアコンや車、家具などといった形があるものを取り扱う営業です。確固たる形があるため、案内がしやすいという点が特徴です。顧客は明確に欲しい物のイメージができている事が多いため、好みや求める内容をヒアリングし、より要望に合ったものを紹介していきます。
有形商品の営業に向いている人
- ヒアリング力がある
- 論理立てて説明ができる
- 分析力、応用力がある
- 柔軟に対応できる
無形
広告代理店やWEBページの制作、システムの構築などが無形商品に当ります。
元々存在しないものを、顧客の要望に合わせて構築し制作していく事が必要なため、営業のヒアリング力が大きく試されます。
営業が聞き取った情報を、エンジニアやクリエイターに伝えて制作してもらう立場になるので、社内とのコミュニケーションや、クリエイターの領域に関する知識があるかないかについても仕事に多大な影響を与えます。
無形商品の営業に向いている人
- ヒアリング力がある
- 論理立てて説明ができる
- コミュニケーション能力がある
- 世の中の流行やニーズなど、新しい情報をアップデートし続けることが苦にならない
- 柔軟に対応できる
自社業態編
メーカー営業(直接営業)
自社で製品を作っている企業の営業です。自動車、製薬会社、食品など様々な業界があります。自社製品を直接、法人や個人に対して売り込むのが仕事なので、自社製品に対して思い入れがある方は有利です。
メーカー営業(直接営業)に向い
- 自社製品に愛着がある
- 論理立てて説明ができる
- 専門知識など勉強を怠らずにできる
代理店営業
自社製品を売ってくれる代理店を新規開拓したり、契約後は自社製品を取り扱っている代理店の販売サポートを行うのが代理店営業の業務です。
保険や通信回線、携帯電話や家電などの例を上げれば分かりやすいでしょうか。商品に専門性があるのが代理店営業の特徴で、エンドユーザーに直接販売するのは代理店になります。
代理店営業に向いている人
- 自社製品の特徴を論理立てて説明できる
- 代理店に呼ばれることが多く、アクティブな行動力がある
- 細やかな気遣いができる
商社営業
メーカーなどの他社と契約し、商品を販売するのが商社営業の仕事です。取り扱う商品の幅が広いのが特徴となっています。基本的には営業代理と言えますが、時にはメーカー側など商品提供側の企業営業と一緒に営業活動を行うこともあります。
商社営業に向いている人
- コミュニケーションスキルがある
- 好奇心が旺盛
- 柔軟な思考と行動ができる
- 論理的に考え、行動ができる
- 人材育成コンサルタント
- 国家資格キャリアコンサルタント
営業と一言でいっても、多岐にわたる仕事であるのを理解する必要があります。自社の商品やサービスを売り込み、一回の商談で契約してもらうことだけが営業職の仕事ではありません。相手との関係を構築したうえで、時間をかけて商談に臨む場合もあります。
営業の方法、取扱商品、営業形態などを幅広く理解したうえで、どのような営業に適性があるのかを確認する必要があります。「向いている人」の内容をヒントに検討するのも一つの方法です。また、どの営業職であっても、自社の商品やサービスに興味をもって営業するのは前提として必要です。自社の商品やサービスについて深く理解し、周辺知識についても勉強し続ける姿勢をもって取り組みましょう。
営業職の転職に人気の業界とは?
営業の種類だけでなく、当然企業の数だけ営業はあるわけで、その中から特に人気の業界とはどこになるでしょうか。
人気の転職サイトdodaでは、2021年に営業職の転職で人気だった企業のランキングを公開しています。
引用元:doda【営業】転職人気企業ランキング2021:https://doda.jp/guide/popular/syokusyu/sales/
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世界に通用する大企業が名を連ねていますが、傾向として見てみると、メーカー、商社、IT系、サービス業が多いようです。どの業界も将来的に縮小されるような不安があまりない業界に感じます。
現在のコロナ禍という世情的に、サービス業が上位に入っているのは少々意外なところではありますが、空輸系は前年より順位を落としている代わりに、JRやオリエンタルランドなど国内の観光に関わるサービス業については、海外渡航に制限がある分、将来性を見出しているのかもしれませんね。
営業職の掘り下げで、適性に合った営業職が見つかる!
ざっくりと分類して挙げただけでも、営業にはこれだけの種類があります。同じ営業と言いつつも、業務にはそれぞれの個性があり、更に取り扱い商材によっても営業の仕方や行動まで違ってきます。
現在営業として働いていて、別に嫌なわけじゃないけどなんとなく違和感のある方や、いまいちやりがいを見いだせていない方など、そんな方には特に一度業務と適性について考えてみてはいかがでしょうか。
これから新しく営業の仕事に挑戦してみたいという方も、どんな営業が向いているか、上記からなんとなくアタリをつけて、そこからまた企業や商品の特徴について掘り下げるヒントにしてもらえたら幸いです。
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営業職は、やり方を正しく理解して実践すれば成果の出やすい仕事です。営業職として現在は成果が出ていなくても、少しやり方を変えただけで成果が出ることもあります。また、転職して別の企業で営業職に就いて成果を出せた人も多くいます。現在はうまくいってないからといって営業職を敬遠せずに、自身の適性を踏まえた営業職の仕事を見つけてください。転職によって新たなやりがいが見いだせるかもしれませんね。